novel・1(おお振り)
□映画
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●浜泉side○
映画の予告が流れ始めた時に席に着いた。ジュースを飲む泉の仕草に浜田はもう夢中で泉を見ることしか出来なかった。
「浜田、ウザイこっち見んな」
視線にやって気付いた泉が浜田に放った一言は毎度のことながら鋭いナイフのようにグサリと浜田に刺さったがさすが浜田、食らい慣れているのだろうすぐに復活する。
「孝介」
何度か繰り返していきなり名前を呼ばれて、少しだけ驚いた泉だが、映画に集中したいので顔を少し浜田の方に傾ける。
「なに?俺映画に集中したいんだけど?」
「あ、あのさ・・・・俺、お前が・・・・す、す『パコーン!パシッ!ドスッ!ズシャァァァー!』」
浜田の声は映画の音によってキレイに掻き消された。そして浜田はその事実に気付いていない。
映画―――時にそこは最高にムードのある場所になるが、時にそこは非常にタイミングの合わない場所に変わるということを覚えておこう――――