novel・1(おお振り)
□母の日
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母の日‘by阿部’
「あ、阿部くん!!」
いきなり呼ばれて振り向けば熟れたトマトみたいに顔を真っ赤にしている三橋の顔があった。
「なに?なんか用?」
「あ、あのね、お、俺、あべくんに言わなきゃいけないことが・・・・・・・ある」
状況が分からないのでゆっくりと三橋に聞いてみた。
「今日なんかあったか?(練習メニューは花井が朝言ってたし・・・クラスの事なら田島や泉がいるしな)」
「ち、ちがうよ・・・・俺、いっつもあべくんに迷惑かけてる・・・・マウンドでも、学校でも。暗くて、弱虫で、泣き虫で・・・・・その度にあべくんをイライラさせて・・・・だ、だから俺・・・・」
確かに俺は三橋に対してイライラしてる。三橋の言動、性格全部にだ。なにをするにもオドオド、めそめそしている所を見るとついつい口に出てしまう。それでも三橋はなかなか変わってくれない。入学当初は三橋のコントロールの凄さに驚いていたけど、ただそれだけで。マウンド以外じゃダメな三橋。生活も結構がさつで部屋とか結構汚くって・・・・。
「こ、これ・・・・・・・」
そういって三橋が差し出したのは赤いカーネーション。これまた真っ赤なヤツ。
「なんでカーネーションなんだ?」
「き、今日、は、母の日だから・・・・・」
「は、母の日?」
そう言うと、三橋は全力ダッシュで教室から出ていった。戸惑う俺を残して。
今日は母の日。一年に一度育ててくれたお母さんに感謝の気持ちを込めてカーネーションを送る日。
アトガキ:分かりにくかった人のために補足。三橋は阿部に対して母親に近いものを感じていた。母のように叱るときは叱り、優しいときは優しくしてくれる阿部。憧れとかそんな感情を通り越してしまった三橋。その変化に気付いたことをカーネーションに小さく込めてありがとうと伝えたかった。今回はそんなお話。