novel・1(おお振り)

□ジグザグ
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ジグザグ遠回りしちゃったけど、俺はいま―――――――――――お前と一緒だよな?




出会いは太陽がじりじりと照りつく様な夏の暑い日だった。

「引っ越し?誰が?」

アイスバーを片手に持ちながらテレビを見ていた俺は母さんの一言に過敏に反応した。今は夏休み。二学期からの転入は少しだけ、厳しい様な気がした。

「ルリちゃんトコ。母さんの友達の子供がね、埼玉の方に住んでたんだけど、事情があってこっちに住むんだって確か――廉くんだったかな?」

母さんのハナシを間接的に聞いてた俺は、その廉って子に会おうと近所のルリん家まで自転車をこいだ。
ピンポーン、ピンポーン――――
数回程のチャイムが鳴ってガラガラと勢いよく玄関が開いた。

「叶、なんの用?私宿題しなきゃいけないんだけど」
「いきなり追い出す様なセリフ吐くなよ。あんさぁ、今度ルリん家に廉って子が引っ越して来んだろ?どんな子なんだ?」

本当に宿題があったのかはわからないけど『えー』と文句を言いながらもルリは答えてくれた。

「レンレンはねー、優しい子だよ。いっつも人のことを気にかけて、他の人のことばっかり優先させちゃう子。叶とはおお違い」

最後の一言が気になったが、俺は気にしないことにした。俺は心が広いから。
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