novel・2(バテリ)
□冬空
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「なぁ巧〜」
ふと、名前を呼ばれて巧は気付いた。
「んー、どうしたサワ」
冬空〜ChristmasDays〜
「寒いんじゃけど・・・・」
巧は横手にある有名な洋菓子店のショーケースに置いてあるケーキに目を奪われていた。
一方のサワはホットココアの缶を手に持ち、街灯の下で巧を待っている。
「・・・・・・・・もしかしてこのケーキ食いたいんか?」
「買ってくれんの?」
巧が見ているケーキの値段は2000円をオーバーしており、中学生のおこずかいでは厳しい金額である。
しかし大好きな巧のお願いを叶えたい・・・・・・。
サワが買おうか悩んでいると、遠くからどこかで聞いたことのある誰かの声が聞こえた。
「おぉーい、姫さーん!」
「「ゲっ!」」
振り返れば、横手のコンビ、瑞垣と門脇の二人が。
瑞垣は忍者もびっくりな速さで巧の隣をキープするとサワに向かって言った。
「こっちのちっこいガキは誰や?」
「なッ・・・・ちっこいってなんですか!!」
「猿みたいな奴やな」
「さ、サル!?」
真っ赤になって吠える沢口に対して門脇が一言。
「こら俊、サルは可哀想やろ。一応ニンゲンなんじゃから」
「門脇さん、瑞垣さんあんまり人の彼氏にあれこれ言わないでください。言うならお二人の好きなストレート投げますよ」
にっこりと黒い笑顔を言う巧に少し震えた横手コンビは脱兎の如く逃げ出した。
「えぃ!」
しかし、逃げ出したのも束の間、キレていた巧のストレートが炸裂、遠くで悲痛な悲鳴が聞こえたような。