novel・2(バテリ)
□夢
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「暇じゃ」
豪は呟いた。彼は今、風邪を引いてしまいベットの中にいる。ちなみに平日。本来ならば学校で授業を受け、放課後には愛しい恋人との部活が待っていたはずだが、起きてみれば熱。ぼーっとする体を無理矢理起こし学校へ行こうとしたが、母に気付かれ、結局学校を休むこととなった。
壁に架けてある時計を見てみると4:00を回っていた。
「ハァ・・・・今頃はみんな部活中かぁ。ええなぁ・・・・俺もしてぇなぁ巧、巧は今なにしてるんじゃろ?」
そう考えると無償に手が動いてしまい、近くにあったキャッチャーグラブとボールを手に取り、天井へと投げた。ボールは宙を舞った後、グラブへと戻る―――その動作を数回繰り返しているとガチャリと音がして部屋のドアが開いた。
「豪・・・・起きてるか?」
突然の来訪者に驚き、思わず飛び起きてドアの方向を見ると巧が薬と水を持って立っていた。
「巧・・・・!?お前、部活はどうしたんじゃ!?」
「その様子だと大丈夫そうだな・・・・。おばさんから薬と水渡されたんだけど飲めるか?練習は休んだよ。キャッチャーいないのにどうやって練習すんだ。バカ、風邪なんか引きやがって。仮にも医者の息子だろが」
巧の話を聞いた瞬間、豪は自分の心臓がドキっとするのを感じた。巧が自分の存在を、自分を必要としてくれている。ただそのことが豪には嬉しかった。豪は思わず巧に抱きついた。
「な!ご、ごうッ」
「巧ッ!大好きじゃ!!」
二人とも真っ赤だった。それはそれはタコみたいに。
「・・・・・・お、俺も大好き」
それは春の澄んだある日の出来事。夢のようなひととき。
「なぁヒガシ、俺達は一体どうしたらいいんじゃろうか?」
「そうじゃな・・・キスくらいしてもいいじゃろ」
というやりとりを遅れてやって来たサワとヒガシがやってたというのは内緒。