唄のカケラ

□海の果て、約束の場所。
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「奴隷が逃げたぞ!」

夜の闇に包まれていた城内が、その声をきっかけに俄かに騒がしくなった。
自室に篭っていた第一王子、レオンはその声を聞き、深く息を吐き出した。

「どうか御無事で…」

あの男は今頃既に海の上だろう。
今回の脱走劇を企てたのは他でもない自分だから。
彼に奴隷なんて似合わなかった。
身分制度に馴染むことなく敬い従う事を何よりも嫌い、まるで夏の風のように自由奔放だった。
もう一生会うことは叶わないが、それでも同じ空の下、彼が幸せを掴んで生き抜いてくれればそれでいい。
開け放った窓から一筋の風が入り込み、レオンの頬をするりと撫でた。








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