唄のカケラ

□狩りの時間。
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ある日合コンで出会った女と行ったサビれたテーマパークで奴に出会った。

テーマパークの人気者……になるはずだった着ぐるみ。
頭でっかちな青いウサギ。
その着ぐるみに包まれた大きな手には、誰にも配られることのないカラフルな風船がいくつか風に揺れていた。

「おす、ウサ男君」

「…ども」

ぼーっと突っ立っていた青いウサギが妙に気になって、俺から話しかけたのが始まり。

「ほら、差し入れ。休憩の時にでも食いな」

「…悪いから、いい」

「いいから!もう買っちゃったし。俺これにアレルギーあって食えねーし」

当たり前に、嘘だけどな。

「…じゃぁ、貰う」

ウサ男君は風船を持っていないほうの手で差し入れをしっかりと抱えた。

「しっかしさー、その着ぐるみ。暑くないん?会う時いつでもソレ被ってるし」

「…そりゃ、仕事だし」

「はは、確かに。ここ時給いいの?めっちゃさびれてるじゃん、こんなとこでバイトするなんて変わり者だなー」

「…お客様も変わり者だ」

「なんで?」

「そのさびれたテーマパークにほぼ毎日通ってる、それに着ぐるみに親しげに話し掛けてる。いい大人なら、中身がいることも知ってるのにずっと俺のことウサ男って呼ぶし…優しくしてくれる」

「んー、不満?」

「…そんなことはないけど、お客様が何がしたいのか不思議で」

「何がしたい…かあ。うーん、ウサ男君ともっと近付きたい、かな」

「ち、近付く?どうやって…」

「こうやって」



ちゅ。



「〜〜〜っ?!」

「あははっかーわーいーっ」

着ぐるみのウサギの口にキスしたら、ウサ男君はすごいうろたえよう。

「ね、いつかさ、その着ぐるみ脱いで俺に会ってよ」

「…なんで」

「今度は本物にキスしたい」

「…貴方は本当に変わり者だ」

ぶっきらぼうにそう言ったウサ男君。
それでもその場から離れないで俺の隣に居てくれる。

「んじゃ、またね」

立ち上がって、んー、と大きく伸びをした。

「……あの」

「ん?」

「ありがとう、ございます」




ちゅ。




「あれ…今の…?」

唇に触れたのは、毛むくじゃらのぬいぐるみじゃなくて、柔らかい…

「そ、それじゃ!」

ばたばたと走り去っていく青いウサギ。
白い尻尾がゆらゆら揺れていた。

「やべぇ、はまりそう…」

咄嗟に携帯を取り出し、その後ろ姿を写メ。
ついでに女の連絡先を削除した。

「俺って悪い男だなー」

だって仕方ないじゃないか。

これってば、俺の「初恋」なんだから。


初恋は実らないなんていうジンクスなんてシカト。



実らせるんじゃなくて、

絶対仕留めてやる。




獲物は、青いウサ男君。



【END】

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