唄のカケラ
□幸せのカタチ。
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何て言うか…格好いい人間は苦手だ。
きらきらしてて眩しくて、自分に確固たる自信を持ってるし。
思わず溜息。
一方僕は目立たないように角を立てないように大人しく生きてきたはずなんだ。
それがなんでこんなことになるんだよ…。
「好き…先輩好き、大好き…」
現在僕は、部活の後輩、和泉猛に押し倒されてます。
…なんでっ?!僕何かしたっけ…??
あー、そっか!罰ゲームだな。そうか、そうだよ、じゃなきゃ学校一のモテ男君がこんな僕の事目にも留めない…はず…
「…西崎先輩?」
うわわっ!整った顔が目の前に。
気恥ずかしくて直視できない。
「ど、どけよ、重い」
僕だって170はあるんだぞ…一応…。
けれど、そんなに背丈は変わらないはずなのに、押しても叩いてもびくともしない。
居残り練習してたから、外はもう真っ暗で、部室には僕達二人きり。
これは…
貞操の危機?!
あまりのことに言葉が出なくて、微妙な間が生まれる。
「ぷっ」
…へ?
「そんな青い顔しないでください」
あっさり体の上から離れる。
「や、やっぱり罰ゲー…」
「本気ですよ」
あっさりいいやがった!
どうでもいいやつならもう犯してます、とあっさり空恐ろしい事をのたまう。
「でも、先輩のことは本気だし大切にしたいので。先輩に振り向いて貰えるように頑張りますので」
―――今日からよろしくお願いしますね。
にっこりはにかむその顔は、やっぱりとても格好よかった。