唄のカケラ

□Necrophilia.
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あの人は死んでも愛してくれると約束したんだ。
だから僕は言う通りにしてみた。
いつでも部屋に帰ればあの人が待っていてくれて。
学校であったことを話す時だってただ黙って聴いていてくれて…ずっと僕だけをその瞳にうつしていてくれて。
でもちゃんと丁寧に処理していたにも関わらず誰も彼も腐敗して僕の側に居たくないと訴えてきた。
なんで?
僕こんなに愛してるのに。
死んでも愛してくれるんじゃなかったの…?





「まったく坊ちゃんは何人アイシタラ気が済むんですか」

執事は主人の部屋を見て溜息を噛み殺す。

「僕をちゃんと愛してくれる人が見つかるまで。」

「私は坊ちゃんのことをちゃぁんと愛しておりますよ?」

「じゃあ死んでよ。そしたら僕も愛してあげる」

「私が死んでしまったら誰が坊ちゃんのお世話をするのです?」

「…やっぱり死なないんだ。嘘つき」

何回繰り返されたかわからない不毛な会話。
その会話はいつも物言わぬ主人の恋人を片付けながら交わされる。

「皆僕を置いて逝っちゃう。死んでも愛してくれるって言ってくれたのに」

「…私は死んだら坊ちゃんを愛することは出来ません」

愛し愛されるのは生きている人間の特権。

「…僕は永遠の愛が欲しいんだ」

「坊ちゃんが亡くなるまでなら心の底から愛して差し上げます」

いくら私が死ぬほど坊ちゃんを愛していようともまだ私は死ぬ訳にはいかない。
この人を本当に独りぼっちになどさせられない。
死なないことこそが愛だと何故気付かない?




全く厄介なものだ。
愛した人が同性で主人で。



それから



死体愛好者だなんて。


【end】


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