唄のカケラ
□Undertaker.
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稲妻が空を照らし暴風が酷い音を奏でているある晩。
「ご機嫌いかがかな、憐れな執事サン」
「お邪魔します、葬儀屋」
店の主…葬儀屋はぷかりと水煙草を優雅にふかしている。
「こんな天気の素晴らしい日に君の主人は何を御入り用かな?」
「今日は…そうですね、出来るだけ負荷に堪えられるモノを」
「ふむ、それは素敵なお願いだね。君の主人はますます気狂いな訳だ」
「…我が主人をお褒め頂き光栄です」
「ふふ、ちっとも心が篭ってないぢゃないか」
「そんなことは…」
「まぁいいサ、一寸お待ち。愛すべき御主人サマにいい子を見繕ってあげよう」
葬儀屋はごそりとものぐさそうに腰をあげひょいひょいと柩の蓋を開けていく。
「あぁこの子なんて好みぢゃないかい?金髪で碧眼、まるで君みたいだヨ」
「あの方は金髪を厭みます。出来れば別のモノを」
「愛されてるんだねぇ、従順な執事サンは」
「それはどうでしょうか…私が死ねば最高に愛されるかもしれませんが、今はまだそういう訳にも」
「いかんとも憐れ、憐れだねぇ」
こんなに楽しい悲劇はないヨ。