唄のカケラ
□夏と秋の境目センチメンタル。
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学校からの帰り道。
進路指導の教師に呼び出されて解放された頃にはもう世界はオレンジ色に染まっていた。
「…先輩、なんでそこにいるんですか」
校門の柱に軽く寄り掛かっているその姿に、どことなくほっとした。
「んー?勿論トモキを待ってたんだよ。一緒にかえろ」
それに軽く頷いて二人並んで歩きはじめた。
暫くはいつも通り馬鹿話をして笑いあっていた。
そう、いつもと何一つ変わらず、お互い何も知らないフリして。
ふと一陣の強い風が吹いて、その寒さに秋の訪れを感じた。
季節が予想以上の速さで移り変わっていくことが忌々しい。
ずっと夏で、ずっとこのまま、ずっと俺は2年生で、ずっと先輩は3年生のままでいられたらいいのに。
心の奥で燻るわだかまりに無意識に顔を歪める。
「そんなに寒いならマフラー貸そうか?
それとも…俺に暖めて欲しいのかな?」
「!!!」
気づいたら至近距離に先輩の顔があってドクリと心臓が大きく脈打った。
そんなキザい台詞は可愛い女子にでも言ってやってクダサイ、なんて文句を言いながらも、俺の顔は真っ赤に染まっていた。
耳元で、しかも鼓膜を揺さぶる甘くて低い声でそんな事言うなんて…反則だよ。