唄のカケラ
□封じた想い。
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08.哀れに腕は空を抱く
「な…なんで、知って…」
「お前のことを心配したお前のねぇちゃんから相談を受けたんだよ。自分の彼氏のことを弟が好きみたいなんです、とね。お前あの頃から山崎先生にベタベタ付き纏っていたもんなぁ。でも残念だったな、山崎先生がねぇちゃんと結婚しちまって今更手ぇだせねーよな」
くそ姉貴…!
こいつが俺の事を邪まな目で見ていたことに気付いて姉貴はあえてこいつにカミングアウトしたに違いない。
「はは、そんな顔すんなって。この俺が慰めてやるよ」
「………ろよ」
「ああ?なんだって?」
「やめろっつったんだよこの腐れ教師が!」
ペラペラと喋って油断していたのだろう、俺の拳は和田の顎にヒットした。
「ぐぁっ?!」
和田が呻いている隙に和田の身体の下から抜け出した。
立とうとしたらさっきまで寝かされていたのと首を絞められていたせいでぐらりと立ちくらみを起こしてしまった。
倒れ込む寸前、胸元を掴みあげられた。
「少し優しくしてやったら付け込みやがって!逃がしやしねーよ!!」
ガツッと音が響く程強く殴り飛ばされた。
その勢いで和田は再び俺の上に馬乗りになり、今度は俺の片手をネクタイで実験台の足に縛り付けた。
乱暴に、でも手際よくベルトを外し、スラックスとアンダーを一気に膝まで引き下ろす。
急に外気に触れて俺のモノはふるりと震えた。
「はっ、いい眺めだ。興奮するね」
妙に汗ばんだ冷たい手で身体を撫で回される。
「気持ち悪…」
せめてもの抵抗に言葉を吐き捨てる。
和田は耳聡くその呟きを拾って嫌らしい笑みを浮かべた。
「どうせヤるならお前も楽しめよ」
身体を這い回っていた手が、打って変わって触れるか触れないかくらいのぎりぎりの強さで身体を撫でてくる。
「…お前なんかのへぼテクで感じる訳ねーだろ」
「へっ、そんなこと言ってられんのも今のうちだ」
急にグッとモノを握られて身が竦む。
やわやわと揉みしだかれて徐々に熱が集まっていく。
「は、固くなってきたぜ?感じてんじゃねーの?」
「んな訳…!あっ…!」
緩く上下に扱かれて否応なしに快感がうまれる。
「ふ…、ぅあ…や、やめ…」
実は他人に触らせるのは不本意ながらこれが初めてで。
気を抜くと腰が浮いてしまいそうで唇を噛んで気を紛らわせた。
ガリ、と音がするくらい噛み締めたら、口の中に鉄の味が広がった。
「おっと、自棄になって舌噛んで死なれたら困るからな。お遊びはこの辺にしとくか」
ぐるりと身体が反され俯せにされた。
ぐったりして、もう抗う気力も削がれていた。
だけど、ひたり、と後ろに宛がわれて全身から冷や汗がぶわぁと噴き出した。
「や、いやだっ!やめ…」
「もうおせーよ」
躊躇う様子もなく、ぐちりと中に侵入してきた。
「ぃあ゙っあぁあ゙あぁあ゙あ゙っ!」
身体が裂ける…!
強烈な痛みと異物感に襲われる。
太腿をぬるりとした液体が身体を伝う。
それを見て奴は満足そうに口角をあげた。
「お前、ハジメテだったんだな。へへっ得したぜ。残念だったなぁ?ハジメテの相手が俺で」
「あ゙…ぐ…」
「まぁその内気持ち良くなるからいいだろ?異常なお前は大人しく俺にケツ差し出しときゃいいんだ」
「ぐ…クソ…が!」
「まだそんなこと言う元気が残っていたのかァ?じゃぁおのぞみ通りもっとやってやる、よっ、と」
「ぐがっ…あぁ゙あーっ!!」
ますます酷く掻き回され、俺の口から引っ切りなしに悲鳴が漏れる。
俺の上で汚らしい肉塊が一心不乱に腰を振っている。
生暖かい息が背中にかかり気持ち悪い。
けど、身体は死ぬ程痛いのに、それに反比例して頭はクリアになっていく。
…そうだよ。
異常な俺には異常者がお似合いだ。
「ほらっ泣き叫べ…!だぁいすきな山崎先生に助けでも請うか?もっとも、犯された後で、どんな面して会うんだろうなぁ?はははっ!」
そんなの、今更、だ。
助けなんて請えない。
わかっている癖に。
嗚呼痛い。
嗚呼汚い。
どぷりと真っ黒な底無し沼に嵌まっていくようだ。
縋るように伸ばした片腕は空を抱いた。