色々(翼)
□夜恋う花火〜ヤコウハナビ〜
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もしもそいつが咲き誇っても…
本人が望まないのなら、意味の成さないモノに成り下がるんだ
夜恋う花火〜ヤコウハナビ〜
「賑やかだねぇ」
「オレは嫌いだ!!」
「え〜」
周りは出店やらなんやらで、賑わっていた。
微かに香る夏の匂いが、もう夜なのだと実感させる。
小狼たちがココにいるのは、成り行きでなのだが。。
約1時間前
今まで渡ってきた世界で、一番平和な世界に小狼たちはついた。
疲れた、という理由で小狼たちは、降り立った所から5分も歩かない所にある宿へ泊まることになったのだ。
そこで店主さんに、今日はお祭りがあるのだと教えて貰って、今になる。
黒鋼は、それこそ死ぬ気で嫌がったが、ファイに無理矢理手をひかれて渋々ついてきたという感じだ
「乗り気じゃないのはわかるけどさ〜」
「だったら置いてけばよかっただろ!」
「だってー…」
ファイはチラッと小狼たちの方を見た。
と、そこには、頬を赤らめてサクラの浴衣姿を見つめている小狼の姿がある
「微笑ましいでしょ?」
「だから何だ」
「二人きりにしてあげたくて〜…でもそしたらオレ、一人になっちゃうしー」
「白饅頭がいるだろう」
「オレとモコナと二人で何をするんだよーぅ」
「いつも遊んでんじゃねぇか!!」
ぶすーっと頬を膨らませるファイと、今にも殴りかかりそうな勢いの黒鋼。
その光景も、十分微笑ましいモノである。
ファイはニコニコ笑いながら、黒鋼の手をひいた
「あ!あっちになんかある!いこ〜黒りん♪」
「あぁ!?」
二人は屋台の『水あめ』へ向かった。
「いらっしゃいませー!」
「こんにちはーVvコレ、何て言うんですかー?」
「…水あめだ」
「黒りん詳しい〜」
「漢字で書いてあるからわかんだよ」
ここは、漢字圏の国だったので、字程度だったら黒鋼にもわかるのだ。
うきうきとハシャギ、騒いでいるファイを横目で見ていたら、自然と口元が緩んでいくのがわかった
「ん?何笑ってるのー?」
「るっせぇな。笑ってねぇよ…」
「うそだー、今笑ったよーぅ」
「…何にするんだ?」
「この赤いのーVv」
「かしこまりましたー、はいどうぞVv」
「わーぁい」
「金は…」
「あぁ。いらないですよ」
「ほんとー?ありがとー♪」
何か短い棒に赤い塊が乗っかっていて、その周りに透明なモノがくっついている奴をファイは選んだ。
はじめて見るそれに、本当に嬉しそうにしている。
「今日は、一段と機嫌がいいな」
「そう?」
「祭りは…初めてか?」
「うんー、そうだねぇ…こんな楽しいもの自体、オレの国にはなかったし…」
そう呟いて、一瞬だけ目を伏せたのを黒鋼は見逃さなかった
「今日、思い切り楽しめよ…」
「え?何かいったー?」
「なんでもねぇよ…」
黒鋼はファイの手をひいて、人のいない所へと連れて行った
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