獣の奏者エリン



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たくさんの人に祝福された<婚姻ノ儀>から数日後、私とイアルさんは、リランに乗って空を飛んでいた。

リランもイアルさんには慣れたようで、近づいても警戒しなくなった。

そして、おもいきって私のようにリランに乗ったら、空を飛んだのだ。

リランはあまり高いところまでは飛ばなく、雲より下を飛んでいる。

風は冷たく、風の音が轟々と聞こえる耳の近くには、イアルさんの顔がある。


「大丈夫ですか? イアルさん」

「あぁ、大丈夫だ。……まさか飛んでくれるとはな」


初めは、エサルにもトムラにも慣れないリランが、いったいどこまでイアルに慣れるのか、
という好奇心でリランに乗ったのだが、まさか飛ぶとは思わなく、
地上では学者の人たちが驚きの顔でこちらを見上げていた。

「私もびっくりしました、今まで本当に私以外には誰にも慣れなかったんですよ。
 ……王獣の心は不思議ですね」

「そうだな………
 風が、心地良い」

「はい」

リランは特にどこかへ行くこともなく、気流を見つけては楽しそうに喉を鳴らして飛んでいる。

それが突然、何を思ったのかは分からないが東の方向に一直線に進んだ。

ものすごい速さで、騎乗体に乗っていない私は振り落とされそうになる。

「リラン! どうしたの? 降りて!」

リランにエリンの声は聞こえていないのか、何も反応せずただ一直線に、東へ向かっている。

「リラン!」

何度呼んでも言うことを聞かない。

そのとき、突然強風が吹き、体がリランから離れた。
あっ……と思ったとき、イアルさんの手が、私の体を抑えた。

「大丈夫か。おれが覆いかぶさってるから、エリンはリランの背にしっかりつかまってろ」

「はい、ありがとうございます」
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