獣の奏者エリン


変化
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「お母さん、どうしていつも、山リンゴなの?」


ラゴゥの沼の畔に、一本だけ木の葉がとても深緑な木がある。

エリンちゃんが死んだ、と聞かされたあの日からずっと、私は、この木の下に来てお参りをしていた。

そして、今日も。


「前に話したでしょう? ここにいる子の名前は、エリンだって」

「あっエリンは山リンゴって、意味だから?」

「そうよ」

9年前に、チョクとの間にできたラミは、今年で10歳になる。

「ラミと同じくらいの年の女の子だったわ」

「へぇ」


(もし、エリンちゃんとソヨンさんが生きてたら……)

アケ村の様子は、あの日までと変わらずにいれただろう。

男衆は闘蛇の世話。

女衆は家事全般。

でも、あの処刑があった日から、それは少しずつ変化していった。


男たちは毎日毎日闘蛇の世話に怯える。

もし、ソヨンのようなことが起きてしまったら……と、自分の<牙>を今まで以上に入念に世話をしていた。


そして、女たちの中に、ソヨンのように医術に詳しいものなどいない。

村の誰かが病にかかったときは、それはもう女衆全員が、ぎこちない作業で看病していた。

あの家族がいなくなってから、とにかく毎日が忙しかったのを覚えている。


「…帰ろっか。お父さんも待ってるわ」

「うん!」
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