気がついたら膝上にテルミが頭を乗せて寝転んでいた。

「……退け、」
「嫌」
「斬る」
「ハクメンちゃんの膝上で死ねるんなら本望」
「……」

不毛ななやりとりに気づいて口をつぐむ。
こういう輩は相手にしないのが一番だ。
そう思い至るとため息をついて『眼』を閉じる。
しかしすぐに不服そうな声があがった。

「……無視すんなよ」
「五月蝿い」

「寂しくて死んじゃう」
「気色悪いことを言うな」
「本当だぜ?」
不意にテルミの腕が腰に回され、その指が腰骨を撫でた。その感触に不覚にもゾクゾクと甘い痺れが下半身から脳天へと走り肌が泡立つ。
「貴様ッ……!」
「……ハクメンちゃんは俺のこと『観』ててよ。皆、俺のこと『観』てくんねーからさ」
「……テルミ、」

咄嗟に手を伸ばした鳴神から手を引き、代わりにまるで子供のように丸まっているテルミの頭に手を伸ばす。
なんだか今日はやたらと頼りないテルミに毒気が抜かれる。
今、ここにいるのは滅すべき悪ではなく……アマテラスから見放され、器を取り上げられ、狭間の奥に押しやられた魂の迷い子。

「皆、汚いものやテメェに都合悪ぃ現実から目を逸らすけどよ……ハクメンちゃんだけは違ぇだろ?」
「私の『眼』はそういう風に出来ているからな」
「照れんなよ」

耳障りな笑い声が今日は何故か不快ではなくて。
もう少し、もう少しだけ。
……こうしているのも悪くは、ない。





(魂の休息)









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