ユキアネサを得たジンをキサラギ家で育成する当初の計画。
それが崩れたのは鬼札たる存在の我が侭ともいえる理不尽な主張で、しかし『帝』は好きにするがいいとそれを許した。

ただし育成場所は当初の計画通りキサラギ家。『帝』が許可したのはキサラギ家に伝わる戦闘技能伝授を除いてキサラギ家でジンに干渉していいのは『キサラギ家の分家』というテルミが憑依した『器』のハザマだけ、というもの。

「ハザマ」
「どうされました若様」

凛々しく強く成長したジンの精神はユキアネサによって汚染されているが比較的穏やかだ。
それはテルミの手による干渉が功を奏した結果。
しかし別の歪みは生まれていた。

「今宵も一緒に」
「御意」

短い言葉は歳より幾分か大人びているが、ハザマの袖を掴み首を傾げる様は14の年齢より幾分か幼い印象を受ける。
恭しく一礼してジンを姫の如く抱き抱え、寝屋に向かったハザマの唇と目が三日月の形につり上がる。

既にかつての過程においてユキアネサによる汚染で壊れた儚い人形も、テルミにとっては忌々しいクソ吸血鬼唯一の功績……お古を着た生意気な人形も、みんなみんなテルミが秘密の場所に隠してある。
『帝』はそんなテルミの行為を知っているのだろうが放置している。

「好きにしろと言われなくても好きにするさ」

腕枕で安らかに寝入る、自分にしか心を開かない可愛い可愛いお人形の髪を撫でながら一人ごちる。
そうだ、当初の計画と平行して譲れないテルミの計画。


『この子の全ては俺(私)のもの!!』







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