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□わがまま狂想曲
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「今日は駄目だ」

「やだやだ却下」

「駄目なもんは駄目だ」

「俺に指図するなよ」

「……誰の真似だ、幸村」



真田の家は俺の家と違ってベッドじゃなく敷布団だ。

二つ並んだ敷布団の間隔は狭く、なんとなくいやらしい感じがしたけれど。



「せっかく久々に泊まりに来たのに…」



そうだ。
何ヶ月ぶりだろう真田の部屋に泊まりに来るのは。

最近、部活やテストで忙しくろくに二人きりになれなかったし、泊まるどころかキスすらまともにしていない。


だからテストが終わった次の休みに泊まりに来たのだ。

そりゃ期待する。

真田だってそのつもりだと思ったのに。


「仕方ないだろう」

「仕方なくない」


今日は真田家に"佐助クン"とかいう甥っ子が遊びに来ているらしい。
そしてその子はこの部屋の隣の部屋で寝るんだとか。

知るかよ、そんなこと。


「聞かれたら、お前だって困るだろ…」


そんなもん、聞かせちまえ。
…なんて一応俺にも妹がいるので言えるはずもない。


それから真田は電気を消すと背を向けてしまった。

広い背中の肩甲骨は俺のお気に入りで、背を向けられても布一枚向こうのそれはむしろ欲情する材料にしかならない。


「真田、真田」

「……なっなんだ幸村、近いぞ」


うん、わざと。

俺の分の布団はもう用済みだった。


「キスくらいなら大丈夫じゃない?」

「……っ、それは無理だ」


一向にこっちを向こうとしないくせに声だけは掠れて上擦ってる。

可愛いな、って思っちゃったら止まらないよ。

「…したら、止まらなくなるだろう」

「んーそれはその時考えようよ」


お気に入りの肩甲骨に甘えるように頭を寄せると真田の匂いがする。

この状況はこの状況でなんだか面白くなってきた。
どうやってその気にさせようか。


「あ、サービスしてあげよっか」

「そういう台詞はどこで覚えてくるんだ…」

「うーん…蓮二?」

「はぁ…」


お前が深いため息をついてるのは俺に呆れてるからじゃない。
自分を落ち着かせようと言い聞かせる為だ。


「寒いよー、早くあっためて!…とか?」

「どちらかというと暑い」

「分かった分かった。じゃあ夏バージョンで…身体が熱い、どうにかして!」

「…幸村、いい加減にしろ」

「えーやっぱ駄目か、つまんないの」


なんちゃって。

ちょっと遊んでみただけ。
真田がその気になる最終手段を俺は知ってる。


「もう寝るぞ、幸村」

「うん、おやすみ」

「ああ、おやすみ」






「…さなだ?」

「……………」

「………………好きだよ」


「………っ」


ほらね耳元で囁けば簡単に、俺のもの。

やっとこっちを向いた顔はめちゃくちゃ不機嫌そうで、逆にそそる。


俺を押し倒すその手は熱くて、やる気満々なのは俺だけじゃないってことだ。


「あーあ真田の根性なし」

「煩い」


ばつが悪そうに目を反らすのがまた面白くて可愛くてたまんない。


「ふふっ、さなだ大好きー」

「………少し、静かにしろ」

「じゃあ早く口塞げよ」


広い背中に腕を回す。

口を開けたら舌で掻き交ぜて。


キスしたら、止まらなくなるんだっけ?




まあいっか。

だってもう、なんにも考えられなくなっちゃった。





end.








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