□三竦みとは少し違う
1ページ/4ページ

土&沖に銀を絡ませてみたかっただけのギャグっぽいお話。珍しく長いです↓









ある晴れた日の昼下がり。
とある三人の男が、とあるファミレス『バトルロイヤルホスト』にて一つのテーブルを囲み、注文した料理が出来上がるのを待ち詫びていた。

そのうちの二人は黒い隊服を着込み、テーブルの端には各々の刀が立て掛けてある。
硬質な漆黒色の髪をした男は、片足をもう片方の膝の上に乗せ腕を組み、先程からずっと忙しなく煙草をスッパスッパと吹かせていた。
お蔭でそのテーブルの上は、異様に煙たく靄っていた。

そしてその隣に腰掛ける色素の薄い柔らかな髪をした年若い男、いや少年は、先程からずっとテーブルの上に肘を付き気怠るそうに携帯電話を弄っていた。

更にその二人を前にして、これまた柄が悪そうに足を組む天然パーマの銀髪の男は、持っていた木刀をソファに立て掛け、先程からずっと品書きの甘味頁に視線を落としたまま動かずにいた。

そしてそのずらり並んだパフェやらケーキやら、見ただけで高血糖になりそうな写真をためつすがめつしている。


店内には他の客の談笑や店員の声が響き、腹と鼻腔をくすぐる昼食刻の旨そうな香りが充満していた。
だがこのテーブルに座る面々だけは、一切誰も口を開かず黙したままだ。

その煙を吹かし捲くる男、土方は渋面のまま短くなった煙草を灰皿にぎゅっと押し付け、ケースから新しい一本を取り出し口に銜えた。

そして灰皿近くに置いておいたライターで、シュボっとその一本に火を点ける。
そしてまたモクモクと煙を吹かし始めた。
そのライターはどう見てもマヨネーズの形をしており、他人から見たら決して趣味がいいとは云えない。

テーブルの上の灰皿の中には、入店してからまだそれ程時間も経っていないというのに、既に数本の吸殻が無造作に押し潰されていた。


机を挟んで品書きの甘味頁を穴が開くほど眺めていた銀髪の男、坂田銀時はその尋常で無い煙たさにとうとうしかめた顔を持ち上げた。

「よーよーよーよー、お前の上司は何星人ですかぁー?
何?モクモク星からやって来たニコチ○タマン?
喫煙席っつってもよ、限度ってモンがあるって事知らねーんじゃねーの」

銀時はそのモクモク星人には目もくれず、その星人の隣に腰掛ける年若い少年、沖田に声を掛けた。
その沖田は両肘をテーブルに付き、携帯電話に見入りながら銀時に答えた。

「旦那ァーすいやせん。
うちの不出来な馬鹿息子にはよーく云って聞かせやすんでー。
おうニコ○ンタマー、テメー臭せーんだよ、そのモクモク消しやがれっつーかテメーが消えやが・・・」

沖田が最後の一文字を云い終わらないうちに、隣に座っていた土方がその頭部を勢い良くテーブルに押し付けた。
手に持っていた携帯電話ごと、沖田はゴチンっと卓上に突っ伏し「でっ」と声を上げた。

「誰がニコチ○タマだ、あ?」

頭を抑え付けられたまま、沖田は銜え煙草で睨みをきかせる土方の方へぐるりと顔を向けた。
テーブルに白い頬がぺたりと押し潰され張り付いている。

「土方さーん、痛てぇでさ。
アンタぁすぐそうやって無理矢理暴力で捩じ伏せるの、悪ィ癖ですぜ」

「暴力だぁ?」

「上司の立場利用して可愛い部下に昼といい夜といい散々手ェ出しまくりやがってコノヤロー。
俺ァーもう、身体が持たねーやー」

抑揚の無い声で云う割には、アヤシゲな雰囲気を醸し出す沖田の台詞に土方の身体がぐぐぐっと硬直した。
そのせいで口に銜えていた煙草をうっかりぽろりと落としそうになり、慌てて口許に力を込める。

「おめっ・・・!妙な云い回しすんぢゃねーよ・・・!
暴力っつったらテメーのバズーカは何なんだありゃ、ありゃ殺傷じゃねーのかよ?」

「エロ方さーん、妙ってどこいら辺が妙なんでィ」

『全くコイツは!!』と内心冷や汗を垂らしつつ、突っ伏した沖田の手に握られている携帯電話が土方の視界に映った。

普段目にする沖田の携帯電話とは全く別の代物。
その色といい形といい、それはどうにも日々見覚えのある・・・。

はっとした土方は、空いている片方の手で隊服のポケットをごそごそと探った。
土方がいくら探ってみても、そこに在る筈の物は無かった。

「っテメ!それ俺のじゃねーか!」

「マジでか。
何かこの待受け『誠』って書いてありやすぜ、いや違うんぢゃねーかな。
何か美少女キャラの画像もいっぱい入ってやすぜ、しかもかなりエグイやつ。
いや違うんぢゃねーかな」

「いや・・・・それ俺んだから」

「マジですかいこれ見てくだせー、この持ち主やべーでさ」

沖田は土方の顔前にその美少女キャラの際どい画像を見せ付けた。

「いや記憶にねーけど、それ俺んだから・・・・つーか勝手に触んじゃねぇ!!」

と土方はどやし付け、その手から携帯電話を奪い返そうと躍起になった。
沖田はその手をヒョイヒョイと躱しつつも尚画面を操作する。


その二人のやり取りをテーブルを挟んで黙って見ていた銀時は、ソファの背にもたれかかり鼻を穿りながら「ふあー」と欠伸混じりの声で呟いた。

「お宅らさァ、いー加減その痴話喧嘩よそでやってくんね?」

だがその呟きは二人の耳には全く届いていなかった。


* * *


本日、何故この三侍がファミレス『バトルロイヤルホスト』にて、座を供して居るのかと云うと――。

土方が座る長椅子の横に立て掛けてある件の妖刀、『村麻紗』から来ていた。
万事屋が請け負った中では、かなりの高額料金になった大仕事のうちの一つである。

銀時はそのギャラを依頼主である土方からチビチビたかってやると決めてから、たまに沖田に連絡を入れていた。
彼等の巡回中に偶然出くわした体を装い、当の土方に食事を奢らせるためだ。
それは時に甘味屋であったり、今日のようにファミレスであったりもする。

殆どは賭け事で負けて財布の中身がスッカラカンの時、腹いせも兼ねて食い物を奢らせていた。
その際は決まって沖田も同席し、当然の如く沖田も自らの懐からは無銭飲食を決め込んでいた。


一方、土方から見れば沖田との見廻り中に限り、何故か銀時こと万事屋にばったり出くわす。
そして食い物を奢らされる羽目になる。

だが例えそれが気に食わない相手だとしても、土方は一度云った事は頑として守る性質だ。
チビリチビリとたかられる万事屋からの請求に流石に苛付きながらも、こればかりはと黙って堪えていた。

結果どうにも気に食わない相手、銀時を前にし土方の吸煙量は過剰摂取になるばかりであった。


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ