□やさしい言葉
1ページ/1ページ

↓2010ひじかたBD文。慣れない甘さに恥ずかしくじたばたした文death









さらさらと微かな音を立て、癖の無く色素の薄い髪は指から滑り落ちていく。

一つの狭い布団の中、互いが向き合って眠るような形で横たわる。
障子の薄い遮りを通して、朝の光がぼんやりと部屋を明るくし始めていた。
外はまだ早朝の静寂を保ち、遠くの方でチチチと鳥の声が響いている。



昨晩は遅くまで情事に戯れていたが、数時間も寝ていないうちに先に目覚めてしまった。

二人分の温もりの中、暫く目の前ですやすやと気持ち良さげに寝息をかく総悟の顔を眺めていた。

僅かに口を開けた無防備な顔。
その寝顔だけを見ると、実際の年齢よりもとてもあどけなく、到底刀を振るうようには見えない。


左目のこめかみ辺りにある少しの傷。
先日あった捕物時に負ったものだろう。
髪を梳く手を止めそっとその傷をなぞった。
細いかさぶたが少しづつ剥がれ、皮膚が少し持ち上がっている。


七つ程も年下のコイツの日常は、たまにある大きな捕物で途端がらりと色を変える。

その細い愛刀で誰よりも真っ先に刃を抜き、自分よりも体躯のでかい奴らに真っ向に斬り込んでいく。
血飛沫が飛び交う中、紅い瞳をギラつかせ、きらりと光るその刀を正確に振り回す。
その様は命を懸けた斬り合いの中で一瞬目を奪われるほど、時に崇高な美しさを孕んでいた。

そしてそれと同じように、その容姿は伸びやかに成長した。

あんなに小さかった餓鬼が・・・まあ煩い口とこの性格は変わりないのだが・・・、
それさえもこの侍としての早熟した天賜の才を形成させるもののように思えてならなかった。


そしてそれが掛け替えのないものであると感じたのは、いつからだろうか。


傷を優しく撫でていたら、安眠の只中にいた総悟が軽く身じろぎして、その長い睫毛がぴくりと動きゆっくりと目蓋が持ち上げられた。

「 ・・・・・・」

まだ焦点の合っていないようなとろんとした目でこちらを見る。

「 ひじ かた・・・さん」

「起こしちまったか、まだ寝とけ」


傷口を撫でていた手をまた頭に戻し、髪をさらりと梳いてやった。
総悟はまだ眠そうな目をゆっくりと二、三度しばたたかせてまた目蓋を落とし、口許を少し緩めた。


「・・・あー、アンタ、いた・・・」


目を閉じて小さな声でそう云う。

「何だよ、ずっといるじゃねーか」

するとするりと自分の肩口に、自ら頭を摺り寄せてきた。
こういう甘える仕草は平常時には滅多にお目にかかれないのだが、寝惚けているのだろうと肩を抱き寄せ、容の良い頭に手を置き優しく撫でてやった。


「・・・ ヨカッタ・・・」


「何がだ?」

小さくそう返すと、顎を上げこちらに顔を向ける。
寝起きでまだ少し赤みがかった目。まだまだ眠いと主張し閉じていく目蓋に軽く口付けると、くすぐったそうに肩を竦める。
その顔はとても穏やかに見えた。


「・・・ きょうは・・・、
目がさめてアンタがいたら

イチバンに云ってやろうと思ってやした・・・ 」


何をだ、と問い返そうとした時に、瞳をゆっくり開けて少し鼻にかかる小さな声で総悟が言葉を紡いだ。
自分でも忘れていたその言葉が、優しく耳に響いた。



 土方さん、

 誕生日・・・

 オメデトウごぜーやす



その思いがけない言葉に少なからず驚き、次第に口許が緩んでいくのが分かった。


そして腕の中の存在をもっと確かめたく、優しくぎゅうと包み込んだ。






05may'10
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
甘いの難しい・・・けど楽しかった〜
これでいっぱいいっぱいです・・・
そして土方さん、お誕生日おめでとうっ!!
そごたんを宜しくです★
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ