memo

□be at a loss
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3z小話。











言い訳とかそんなもの。

「ただのトモダチだ」

俺にはする必要があるって思ってやがんのか。
多分泣きながらバタバタ走ってく淡い色した髪の女子生徒の後ろ姿が、視界の中小さくなって。
バチンなんて派手な音立てて叩かれた左頬赤くして、そうやって言い訳する相手間違ってんじゃねえのかって思う。

放課後の渡り廊下、俺らの他特に誰が居るって訳でもねーんだけど。
こういうの意図せずに俺に見せ付けること自体忌々しいったらない。

大体。

何あれ。

似ても似つかねーんですけど。

似てるのはカラーリングしてんのか淡い髪の色くらい?
趣味疑いやすぜーって視線を、横に立ついけめんとやらに厭味光線たっぷり浴びせ掛けて。
ワザと大きく「はーあ」と溜息ついてみせた。

「アンタが云うとエロい意味のオトモダチにしか聞こえねーんですけど」
「バーカ、違うっつってんだろ」
「土方さぁん、何人おんなの股グラ開かせたら気が済むんで。
ってかあの子ヤリ捨て?」

でけー声で云ってやったら慌てて辺りを見渡して、気遣うよう肩を潜める。
普段は図体も態度もでけーくせにこんな時にそれですか、ヘタレはこれだから面倒臭い。

「ばっか、、なんつーこと・・・」
「うちの姉貴そーゆう野郎はアウトだから」
「ぐ・・・・・」

ザマーミロ。

蛙が潰れたみたいな声出しやがって。
長年連れ添ってきた幼馴染が、自分の姉貴にマジ惚れしてるってことは当に気付いてるし。
その癖オンナ関係それなりに派手なのも知ってる。

だのに本命には馬っ鹿みてーに純情ヘタレなのも知っちまってるから。
いー加減、イライラもするし。
そんなことこんな近くでずっと見ていたら嫌でもその馬鹿恋慕が知れてしまうもので。

十近くも歳の離れた餓鬼んちょなんて、きっと成人した大人から見ればほんと唯の餓鬼以外の何者でもないだろーって解ってるのに。


「云ってやりやしょーか?
アンタが一発ヤリてーって、したら姉貴も考え変わるかも」

来月結婚するっての、って最後にトドメの一発も付け加えて。
アレ、何だかお口が絶好調ってのはこんな時のこというんじゃねなんて思ったら。
ぐいいと学ランの胸元激しく詰められて、右手は拳握ってて今にも顔面直球で堕ちて来るんじゃねーかくらいのドギツイ凶悪面で睨まれた。


「ぃやだなぁジョーダン」

ふいと襟元を乱暴に突き放されて、久々に間近でその面拝んだなんて。
二三歩後じさって仰のいた目の先に、こんがり火照った空が一面色付いてた。
「帰るぞ」って言葉がぽつりと渡り廊下に響くと、先立って歩くその影に今度は黙って従った。


『ばーか』

口さがない幼馴染と凝りもせず毎日一緒に通学して。
それが例えば想い人のたった一人の肉親であるからだとか。
例えば親の居ない姉弟への、いくばくかの憐れみが混じってたんだとしても。


『ばーか』


それなりに年くっても、どうやっても何ら変わることの無いこの立ち位置だとか。

馬鹿な俺は思い知らされて。


「ばーか」


途方に暮れる。




20110130up


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