DRRR!短編小説
□†あいあいがさ
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雨音が五月蝿い。
『今日の池袋は雨でしょう。傘を忘れないように気を―』
ぷつっ。
なんかうざかったから、テレビを切った。
大体今雨降ってんだからいちいち言われなくてもわかってるっつーの。
カーテンを開けると、鼠色の雲が見えた。
「雨、か・・・」
ざあざあと降り続ける雨を見て、折原臨也は呟いた。
「懐かしいな・・・」
臨也は、昔の事を思い出していた。
あの日も、こんな雨だった。
★★★
「やば・・・傘忘れたぁ・・・っ」
雨に打たれながら、遠い家に向かって走りつづける。
彼は、少年時代の折原臨也。
小学2年の事である。
(傘買うお金も持ってないしどうしよう・・・)
とりあえず雨が治まるのを待つ間、公園の土管で雨宿りする事に決めた。
「はぁ・・・」
雨は止むどころかさらに強くなってきた。
雷も鳴り始め、怖くてとっさにうずくまる。
ランドセルを抱きしめて、怖さを和らげる。
「誰か・・・」
不意に。
土管の片方から。
「おい」
と臨也を呼ぶ声がした。
「・・・お前だよ!」
「・・・あっ」
見ると、二人の男の子が土管を覗き込んでい
た。
「大丈夫か、傘、ねーのか?」
ゆっくりと頷く。
その少年の胸には、『へいわじましずお』と書
かれた名札がついていた。
「じゃあ傘入れてってやるから、出て来い!」
「・・・いいの?」
「当たり前だろ!早くしろ!」
臨也は静雄の傘に遠慮がちに入る。
静雄は、駅まで臨也を送ってってくれた。
「・・・ありがとう」
「別にいい。ほら、この傘持ってけよ」
ずいっと静雄は傘を差し出した。
「え、でも」
「じゃあな!行くぞ幽!」
「うん」
少年たちはどこかへ走り去っていった。
その後、臨也は無事に家に帰れたということ
だ。
★★★
臨也の家の傘立てには、まだその子供用の傘が立てかかっていた。
(また同じことしたら、今度こそ嫌われるかな・・・)
そんなことを考えながら、またカーテンを閉めた。
雨は、変わらず降っている。