お題シリーズA

□きっと今ごろ、キミも僕と同じように空を
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ひとだってヴァンパイアだって。


しっかりと心を持って、しっかりと生きているんだ。







たくさんのことが変わってしまったこの世界。
それでも変わらず朝は来て。
夜も、やって来て。


時は、流れてく。

























「もう少しで長期休暇だね、頼ちゃんはどうするの?」


「私は久々にうちに帰るわよ、名無しさんは?」

「わたしは那央のうちに行くよ、例年通り」

















授業が終わりを告げて。
バラバラと生徒たちは散らばっていき。


そんな中で、わたしと言えば隣りにいた頼ちゃんと話をしていて。


ここは、この場所は何も変わらない。
残酷にも思えるほどわたしの世界は目まぐるしく変わっていったけれど、ここだけは変わることがなくて。


話題は、近々始まる長期休暇のこと。






















「那央と言えば今日はどうしたの?那央が授業休むなんて珍しいじゃない」


「忘れ物したって、一度部屋に戻ったんだけど、……どうしたんだろ、」


「なんだか心配ね、」


「……わたし、行くね、那央探してみる」


「ええ、じゃあまたね」












時計を見て、立ち上がる。


今日は珍しく、那央と一緒に教室には来なかったのだ。
それは那央が忘れ物をしたと言って途中で引き返したからなのだけど。




















「部屋、かな、」
















わたしの、大切な親友。


もうひとりの大切なひとを忘れてしまった親友にわたしはまだ、どうするのがいいのか答えは出せないままで。


ずっとこのままでいいはずがないのは漠然とわかってた。
けれど記憶を取り戻す術も、わたしは知らないままで。

























「那央ー?ただいまー、いるー?」


















部屋のドアを開けて、中へと入る。


明るい笑顔がそこにあることを、ただただ祈って。

























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