名探偵コナン

□漆黒のアリア
3ページ/3ページ










静かな、時間が流れた。


ただ目の前の赤井さんはまっすぐに私を見つめていて。







(そらせ、ない、)









いろいろなことが頭を巡ったけど、答えはでなくて。
どうしたらいいのか、渦巻く感情はなんなのか。
何もわからないままに、私も赤井さんを見つめた。










締め付けられる心の意味が、わかれば楽になるのだろうか。


何故か、知ることさえも怖い気がした。













「………、」


「名無しさん、」


「っ、」









触れられた、頬。
何故か、泣きそうだった。


それでも。
私が選ぶ道は、ひとつしかないのだ。


何を、考えるでもなく。












「っ、」


「傍にいたいです、赤井さん」









自ら抱き着いたのは。
目の前の、広い胸板で。


初めて抱き着いた赤井さんは、大きくて、それでいて温かかった。












「俺にはやらなきゃならないことがある、」


「はい、」


「そのためならなんでもするつもりだ、」


「………はい、」


「それが終わるまで辛い思いをさせるかもしれない、」


「それでも傍にいたいです、……赤井さんの手伝い、したいんです、」










この言葉が。
真実なのか、虚無なのか。


自分自身、わからない。
けど。


私はこういうしかなくて。
本心なのか、そうじゃないか、なんて二の次で。












「傍に、いてくれ、名無しさん」


「………はいっ」














痛いくらい、抱きしめられて。
今はただ、わからない心にフタをして。


私も、赤井さんの背に手をのばした。























NEXT

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ