御馳走(戴物)

□《影の愛好者》
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《影の愛好者》


ああ、愛しい百介さん


俺の名前は由衛門。
田舎から江戸に越してきて十年。

ここで始めた商いも上々。

そして今は恋を実らせる為に懸命だ。


その相手は


「アンタねぇ!こんなんじゃだめやがな!
売れるわけにゃあ!何コレ《三角四角帽子》って何?!」


「………はぁ、すみません」


山岡百介さん



ああ愛しい!彼が愛しい!


あの体を自分の物にしてアハンウフンな、ぶはっ……おっと鼻血が




帰りがけに哀愁漂うあの可愛い顔を一目みてから横恋慕。

それ以来暇さえあれば付けます日々。


今日は朝からだ。


「あんたの百物語もいつ完成すんねよ!
いっそのこと十物語にしちまっへぇ!」

「はい、すみません……でも百まで頑張ります」


「たくよぅもう!」

くそ〜、……俺の百介さんに何て扱いだっ
(※違います)


ゆるすまじ!


はっ百介さんが移動するぞ、追わねば。


ん〜?
またあの怪しい襤褸長屋に向かっているのか?


団子を買うのか、土産だろうな。
はっ!もしかして女ができたのか!!??


わぁ何あの可愛い笑顔、そんな笑顔始めてみましたよ百介さん?


ありえない!
俺の可愛い可愛い初な百介さんに限って!


よし、今日こそ中まで確認してやる!




あっ走ってる!ぎこちなく走るとか萌え!

もしや、それほど早く女の元へ生きたいとか?

いやいや、考えすぎだ多分。


「何かぁ〜〜」(長屋の住人の声)
「いいえって!通して下さい!」


くそ汚い手で綺麗な百介さんに触るな―!!

はっ、いやいや今出てったらもう後付けられなくなっちまう。

大人しく見ていよう。


何か汚い奴らが凄く見てるが気にしない。


「あれ?今日は又市さんだけですか」


「奴だけじゃ役不足ですかい?」

「いっいえ、そんなわけでは」


「冗談でやすよ、ほら座んなせぇ」

「ああ、はい」


畜生〜〜誰だ又市って〜〜。


もう少し近寄ってみるか……。


「あ、又市さんは団子好きですか?
そこで美味しそうなみたらし団子を買って来たんです」

「ああ、奴は結構でやすよ。先生食べて下せぇ」

「そ、うですか」


百介さん……もしや又市が好きなのか?!

だってそうだよね!?

新作の戯作怒られてもそこまで残念そうな声は出してないよ!


「あ、やっぱり食べやす。口移しなら」


「えぇ!?ま、又市さん?」


「何だとおぉお!!」(由衛門)


「……先生。そんなに否定しなくても…
ちょいと傷つきましたぜ」

「違います!私じゃないです外からです!」

「外ぉ?誰かいるんでやすかい」
「ここの長屋の方ですかね」


あっ、つい………
やばい!逃げねば!

俺としたことがっ。今日は夜までのつもりだったのに。
百介さん

俺はまだまだ後を付け回しますからね!


由衛門は風のようにそこから去っていったらしい。



10/29 【天体宮殿+観測病院】“不知火”様より賜物
 

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