待伏せ(やおい)
□責める
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板の間に伏せた裸体の肩を掴み、軍八郎は汗や吐精に塗れた白い躯を抱き起こす。
「ん、……兄上ぇ」
掠れた聲が、『水を』と要求するのに、柄杓で汲んだ水を口許に運ぶ。
飲もうとした百介は、僅かに水を啜るが、大半は胸から腹へと零れてしまった。
「旦那ァ、そりゃ無理でやすよ」
百介さんは、手足が使えやせンからね。
脇からヒョイと伸びた手が、軍八郎の手から柄杓を奪い、新たに水瓶から水を汲み出した。
百介が、潤んだ眼差しで見上げた又市は、水を呷ると口に含んだまま、百介の唇に押し当てて舌を差し込み、渇ききった喉にと流し込む。
もっとと、舌を絡め合い水を強請る百介の無意識な仕草に、又市はズンと腰が重くなった。
「悪りぃ御人だ」
何処で、こンな芸当を身に着けなすった?
「ちが、」
否定の声は、掠れた喘ぎに変わる。
腕を後ろ手に縛り上げられ、脚は左右に拡げるように足首と太股で括られ、長時間縄で縛られ続けた為に、痺れ切った手足の感覚は既に百介には無い。
二人の男根に責め嬲られた後肛は、だらしなく口を開いたまま、注がれ続けた白濁の吐精を零し乾く暇とて無い。
「いゃアァ、もぅ…」
赦して欲しい、と。
もう喉が嗄れるまで叫び続けた哀願は、やはり聞き入れられなかった。
「未だ、足りなかろう?ほぅれ、俺の指を喰ろうておるぞ」
淫乱だな、幾ら呑ませても腹一杯には為らぬのか。
「指じゃあねぇ。旦那ァ、いっそ握り拳でも捩じ込んでやったら如何で」
百介さんは、奴達の摩羅じゃあ満足なさらねぇんだろ。
蒼白となった百介が必死に首を振るが、ぐじゅっ、と下腹が異様な孕みを形取って、軍八郎の拳が容赦無く埋め込まれた。
「ヒ、ぎゃああっ」
ビクビクと、根元を縄で括られたままの百介の牡が震えるが、吐き出す液は涙の雫のように、屹立する肉棒から滴るだけだ。
「ああ〜っ、ひぎぃっ」
「百介さん……ほら、奴のも」
誰のにも“おしゃぶり”する、その色狂いな唇で可愛がっておくんなさいよぅ。
「又市、口が過ぎるぞ」
百介は誰でも良いという訳ではない、来る者が拒めないのだ。
優しいからな。
「ほれ、こんなに責められ嬲られても……可愛い摩羅が勃ちよるわ」
俺達に苛められるのが、余程に嬉しいのだな、百介は。
うぐっ、ぐぇっ、と。
又市の猛り勃つ男根を、喉にまで押し込まれ出入れされている百介は喋ることは出来ない。
必死に「違う」と「そうではない」と否定しているのに。
言えば言う程、残酷なまでに無惨で無情な御仕置が、百介に与えられ続ける。
「百介さんの“雌”が満足するまで、離しやせんぜ」
「おう。俺達を味わい尽くして貰おうか」
肉鞘に、埋め込まれ突き掻き回されるのは、愛しい二人の男の肉楔だけではない。
指や舌、のみならず、張り型や悍ましい責め道具まで。
百介の肉慾を、とことんまで苛め抜く気だ。
「も…もぅ…助け、て……」
おかしくなる。
気が、狂う。
百介が悲鳴と喘ぎの合間に、途切れ途切れに訴えれば。
腫れ上がった摩羅と乳首を、前後から嬲りながら。
又市と軍八郎は、壮絶な嘲笑いを向けた。
「狂えば良い!」
「狂っちまいなせぇ!」
狂った肉体と精神ごと、貴方を抱き締めて愛し続けてやろうから。
二人の、物狂いの哄笑を耳にしながら、百介は前後の口で摩羅を味わい続けた。
嬉し涙なのか、絶望の涙なのか。
頬を水で滴らせて。
2007.11.08 -END-