待伏せ(やおい)

お刺身
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《お刺身》


 又市がチロリと舌先で、百介の柔らかな唇を突つけば、怖々と応えて薄く口が開かれる。
 後はもう思う様、百介の舌を絡めて、口内を舐め尽くす。
「…ン…んふっ…」
 唾液が溢れて零れそうになるのを、又市は吸い取った。
『甘ェなあ…』
 熟れた果実とて、ここまで満足はしない。
 又市は何度も何度も口を合わせ、百介の全身から力を奪い去り、畳に押し倒しても口を吸い続けた。
「はっ…ま、た市さ…んむっ」
 紅を差したように、赤く濡れた唇で、百介は喘ぎながら『何処が、御馳走なんですか』と、目を潤ませて訴える。
 又市は『ちゃんと御馳走いたしやしたよぅ』と嘯いて。
「おぅや、足りやせンでしたかぃ」
 百介の襟を左右に押し拡げ、本格的に愛撫の手を下腹部にも這い回す。
「で、すから…何が…」
「“お刺身”、タンと差し上げやしたでしょう?」
 御存知じゃあないンで?
 廓言葉で“お刺身”と言ゃあ…
「く、口吸いの事ぉっっ!?」
 余りのことに上半身を跳ね起こそうとした百介は、『ひあっ』と甘い悲鳴を上げて畳に伏せる。
 又市は、ニヤニヤと若気た笑みを浮かべながら、百介の魔羅に舌を這わせていて。
「ひっ、酷い…あ、止めて…下さ、いっ」
「そんな目ェで睨まれたら…かえって煽られやすねぇ」
 又市は百介自身を咥え込み、歯で扱くようにして頭を動かす。
 その刺激に、魔羅は見る間に漲り百介は熱い吐息を付きながら、又市の行者包みを頭から取り外した。
「又市さん…」
 御馳走だと言うのなら、又市さんの吐精で私のお腹を一杯にして下さい。
 伸ばされる腕が背に回され、百介からの赦しを得た又市は、着物をはだけながら暖かな躯に伸し掛かった。
「奢って貰いやしょうかね」
「好きですよ…又市さん」
 はんなりと微笑を浮かべながら、百介は我が身にと又市を誘った。
「堪らねぇなあ」
 呟き、又市は独占欲を満たすべく、百介を更に強く抱き締めた。


-end-


狩猟(巷説)
 

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