待伏せ(やおい)

□キリバン4000リクエストの『おまけ』
1ページ/1ページ


『バンパイヤの……』欲求不満っ!


 ゆっくりと、柔らかなキスを一つ。
 相手を怯えさせないように、額に頬に、唇にと。
「いきなりは、しやせんぜ」
 余りに相手が堅くなっているので、そう告げれば潤んだ瞳が又市を見上げて来る。
「いえ、そうじゃありません……」
「怖い、ですかぃ?」
 僅かに身を引いて問えば、背に回った腕に力が籠る。
 又市の腕の中で、百介は瞼を伏せて馘を横に振った。
「又市さんに求められるのは、嫌ではありません」
 でも、こうして他人と触れ合うのは、お恥ずかしい話ですが初めてなので。
 そんな可愛いことを口にする彼に再度、想いの丈をあらん限り込めて、又市は真面目に求婚した。
「百介さん、奴と生きて下せえ」
 瞳を見開き、口許に優しく寂しい笑みを浮かべた百介は、又市の求婚に、頷かなかった。
「否、なんですかぃ」
「いえ……私は、そうしたい……でも、いずれ死が私達を別れさせるでしょう」
「先の長い心配でやすね」
 百介の不安を一笑に伏して、又市は頬に手を当てて気持ちを宥めるように撫でた。
「それに、ンな不安は直に無くなりやすよ」
「又市さん、本当なのですか?」
 貴方が、バンパイヤだと話して下さったことは。
「真実でやすよ」
 百介さんにとっては、残念だったでしょうがね。
 とんだ化け物に惚れられちまったよなぁ、と。
 そうおどけながらも苦味の籠る声で、又市は百介に詫びた。
 彼との性交は、間違いなく人としての総てを喪うこととなる。
 又市は、永遠の伴侶を得る替わりに、百介は、人では“亡く”なる。
 だからと言って又市は、今更、百介を手放す気などサラサラ無い。
 連れて行く気ならば、満々だが。
「又市さんとならば、何も怖くない……平気ですよ」
 重なる躯が、絡み合う腕と脚が、『離れ難き想い』を互いに伝え合う。
 そして―――――



「行きましょうか」
「へい、参りやしょう」
 手を繋ぎ合い、二人で踏み出す。
 陽の下でも、貴方がいるから、痛みはない。
 夜の闇も、貴方がいてくれるなら、恐れは無い。
 二人、微笑み合って、歩き出す。
 永久の、旅路を。




2007.10.24 END







 如何でしたでしょうか。
 甘いラブラブもエロも「欲求不満じゃいっ」な苦情は、何時でも受付けます。
 つか、マジ欲求不満じゃね?



※お戻りはコチラからジャンプを。
キリバン4000リクエスト
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ