狩猟2(リクエスト)
□キスのお題
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《キスのお題@》
つ、…と。
互いに握り合わせた手を、又市は静かに持ち上げた。
手の上なら…
ゴツゴツと、荒れて汚れた又市の手と違い、繋いだ相手の手は、男にしては白くほっそりと繊細な指をしている。
世の汚れに晒されない、清らか過ぎる手。
「又市さん?」
嫌悪も不信もなく、躊躇いすらなく差し出され、握り合わせられた手は。
とても温かく、とても優しい、手。
つい、と。
己の手と共に相手の手を持ち上げ、又市は静かに口許に近付けた。
「又市さん?」
怪訝そうな声に、ニッと人を喰ったような笑みを返して、又市は白い手の主から視線を外さぬまま。
ゆるり、笑んだ形の唇に。
相手の指を押し当てた。
「あ…あの…」
ぱっと朱を走らせる白い面に向けて、クククと低く喉で笑いながら。
ペロリっ。
又市は、指の関節に舌を伸ばし、わざと濡れた感触を与えるように、ひと舐め。
恥ずかしいのなら、繋いだ手を振り払えば良いものを。
それすら忘れて、耳まで赤くなって息を飲みこみ固まってしまう純情な相手の反応に対し、又市は繋がれたままの手へ、なおも愉し気に口付けを繰り返す。
貴方の、その優しさに。眩しい程の素直な真っ当さに。
限りない敬愛を込めて。
「先生ェ…」
手の上なら尊敬のキス。
カリリッ。
握られたままな百介の、人差し指の関節に。
又市は、強請るように歯を立ててから。
舌先でなぞり、また口付ける。
-END-
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