狩猟2(リクエスト)

□キリバン4000リクエスト
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 百介は、その場から逃げ出そうとして、脚が地に張り付いたみたいに全く動かないことに、漸く気付いた。
「ま、た、いち、さん?」
「奴はぁね、所謂、バンパイヤなんで」
 太陽も十字架にも平気でやすよ。
 血だって、そぅ何時も人を襲って、啜ってる訳じゃありやせん。
「ただ、ね。血の絆を結ぶ“婚姻”の儀式は、別でやしてね」
 ゆっくり近付いて来た又市は、ガタガタ震えている百介に両腕を回し、逃さぬよう抱き竦めた。
「アンタだけだ……こんなに欲しいと思ったのは」
 馘筋に牙を立てようと、口を近付けた又市は『駄目です』と悲鳴を上げた百介に、動きを止められた。
「嫌がっても無駄でやすよ」
「ち、違いますっ」
 私は、“ベジタリアン”なんです
「………はあ?」
 又市の下顎が、カクン、と落ちた。



「確かに、バンパイヤの“一族”には、稀に“ベジタリアン”が産まれるそうでやすが
 見た目も成長も、全く普通の人間そのもの。
 バンパイヤの能力や特性を、総て受け継ぐことなく産まれた、特異な存在。
 よって“一族”から養子に出されて、普通の人間として、(バンパイヤにしてみれば)ごく短い一生を終える、という話だ。
 又市だとて、噂でしか聞いたことがないが。
 まさか、それが。
「百介さ〜ん
 目の前の、この男だったとは。
 道理で“一族”の上役達に、無理な願いが二つ返事で了承された訳だ。
「駄目なんです。血を見ると、私は貧血起こしてしまうんです
 もともとは同じ、バンパイヤ一族の出自。
 であるなら血の“婚姻”は、承諾されながらも“不成立”となる。
 又市の方は別に問題はないのだが、百介は血の交流を全然全く、とことん受付けないのだ。
 幾らお互いが憎からず想い合っていても、こればかりは、どうにもならない
「あのっ、ずっと又市さんと、一緒に居ますから///」
「嬉しいですよ(今はまぁ、これだけで我慢するしかねぇな)」
 体質改善を気長にするしかないらしい。
 バンパイヤ又市は、半永久的に『欲求不満』のまま、伴侶である百介の側に居ることになる。

 合掌



2007.10.24 -END-

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