絵本百物語(辞典)

44件

【かみなり (かみなり)】
《前巷説4》“かみなり”(雷電:神鳴りを使う)(下野の国は筑波(常陸の国)の辺りに雷獣という獣、山中にあり。夕立雲の起こらんとする時、勢い猛々しく空中へ駈けるが、その勢いは当たるべからざるもの、という)
御燈の小右衛門、登場。好きです、天狗のおぃちゃん又市よりも余程に冥府魔道に墜ちたような、凄いヤツ。
ちなみに、雷獣はちゃんと実在する獣です。(ホンドテンだと言われていますが、ハクビシンやアナグマとも混同されている箇所あり)
木の洞に住家を作る習性ので、雷落ちた後にこの獣が死んでいるのが多かった為に、雷と一緒に落ちる、とされたのでは?
ホンドテンの山の渾名は“天丸”、名前からして可愛いヤツ
ハクビシンは帰化動物とされてますが、割と歴史は古くて意見の別れる所。誰が連れて来たのやら。

【旧鼠 (きゅうそ)】
《前巷説6》“きうそ”(年を経た化け鼠のこと。子猫を育てているのか、子猫を襲っているのか)
小学生も知っている『窮鼠猫を噛む』は全くもって別物。
しかし鼠の属する族にはカピパラとか、とんでもなくデカいのもいますから。
生まれたばかりの鼠の子は、丸裸。かのハダカデバネズミなみの不思議な姿であります。
ちなみに、この画集には育てている説と襲っている説が二つあるのですが、鼠が猫を育てている説の方が実際のニュースとしたら余程珍しいのでは?

【葛の葉 (くずのは)】
第十九“くずのは”信太杜のくずの葉の事は稚児までも知る事なれば、
こゝにいわず。

異種婚姻潭でも有名なもの。
かの阿部晴明の母親が、霊力高い狐であったとされる話。
しかし、考えてみるに「キメラや遺伝子操作生物じゃあるまいし、まず人間と動物との自然交配では合成生物は出来ませんっ」つーのが現代の常識。
つまりは「得意な能力や特出した能力を持つ者へ、嫉妬憎悪した者からの、出自の下落を狙った悪意な噂」が高い訳です。
イジメの一種と見ると…日本人の根性って情けね〜、なオチがつく
ちなみに、神の子供とされるのと妖怪変化の子供とされる格付けは、かなり差があります。が、どちらも扱いは悲劇で終わることが多いのが「哀しいやねぇ」

【狐者異 (こわい)】
《続巷説2》“こわゐ”(ただ恐るべきは自己の悪念である。この頓着を捨て去らぬ時は、仏といえども嫌い恐れ給う)
原作《続巷・狐者異》編は、そのまま《前巷・旧鼠》編と繋がってます。
おぎんさんと又市さんを離れに招き入れることに成功した百介さん、がラストに見れます。
狐者異という妖怪は、全く正体が判らない
というか、人の精神の中に寄生していく妖怪だ、という設定のほうが余程しっくり来ます。
そうなると…脳心理学の分野かぁ

【五位の光 (ごいのひかり)】
《後巷説5》“ごゐのひかり”此鷺五位のくらゐをさづかりし故にや
夜は光りありてあたりを照せり。

ゴイサギという鳥ではないだろうか?
彼等は沼や池あるいは河口等で魚や蛙等を捕食するのだが、その際身体にある種のプランクトンや藻が付着し、それのせいで光っているように見えたのでは、と言う説があり。
ゴイサギは夜間にも活動する鳥だから、有り得る話なのでは?

【塩の長司 (しおのちょうじ)】
“しほのてうじ”《巷説5》家に飼たる馬を殺して食しより
馬の霊気常に長次郎が口を出入なすとぞ。
この事はむかしよりさまざまにいひつたへり。

ある意味、百介さんが頑張りました。
四つ玉の徳次郎さん、出て来ます。
しかしこの幻術遣い、何故か礼生の中ではギャグメーカー。
しかも治平さんより精神的に若い気がしてならない。
因みに、馬の怪で一番怖いと思った話は「夜中に血塗れの馬の首が、にゅ〜と玄関から入って来て…」というもの。

【死神 (しにがみ)】
《続巷説5》“しにがみ”死神の一度見いれる時は必ず横死の難あり。
自害し首くゝりなどするもみな
此ものゝさそひてなすことなり。

又市が背負ってしまった妖怪、というべきか。
それにしても原作では、危機一髪な百介さんでした。
西洋東洋の区別無く、死神というと《骨》あるいは《死体》というものを連想させる姿になっていますな。
いや、日本の死神は大鎌なんて持ってないけど、魂を狩集めてあの世に持って行く、というのは全世界共通な“死神”のイメージ。

【芝右衛門狸 (しばえもんたぬき)】
“しばゑもんたぬき”《巷説4》淡路国に芝右衛門といへる古狸あり。
竹田出雲芝居興行せし折から
見物に来りて犬に食はれ死たり。
然れ共廿三日が間は姿をあらはさゞりしとなり。

巷説の全編通して、個人的にこの話は好き。
芝の爺さんが狸と友達になる姿は、なんとも親しみが沸く。
恐らく事触れ治平は、狸の演技を地でやってたのでは?

【出世螺 (しゅっせほら)】
第十五“しゆつせほら”(深山に法螺貝あり。山に三千年、里に三千年、海に三千年を経て龍となる、という)
古代巻貝の中には超巨大なタニシがいたそうで…もしかすると昔の人は、その化石をみて妖怪法螺貝を考えてみたのかも。
その法螺貝が抜け出した跡ってのが、伝説とともに残っている地方あり。
「地中のガス溜りが一気に破裂した跡」という説もあると聞きます。
この詳細を知る方、是非にも礼生に一報下さい。

【周防の大蝦蟇 (すおうのおおがま)】
《前巷説2》“おほがま”(蝦蟇:虫莫の字を使う)周防国の山奥に
年ふるき蝦蟇(虫莫)ありて
常に蛇をとりて食となす。

巨大蛇がいるなら巨大蝦蟇がいたって不思議じゃない。
世界には最大級のゴライアスカエルもいるぜという話。

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