たえとの短編集☆

□御伽夜話(おとぎよばなし)〜幻想の宴
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 私の里では、小さな竪琴を弾くのは、一種のステータスだった。

音楽で、女は子供をあやし、心を癒す。男は、精神をクリアにし、統率力や共生の心を学ぶのだ。

特に人の上に立つものには、馬と剣術、竪琴は、必須の素養だ。

父も母も、竪琴が巧かった。低い調べと高い調べの合わさる揺りかごの中で、私は過ごした。幸せだった。

 落ち着いて、弾けばいい。

父の弾いたように、低い調べで、高い調べを包むようにしてやる。

母の弾くような、温かい音色でメロディラインを創ってゆく。

ただ、指先と耳は怜悧に研ぎ澄ましながら。 

 両手首にきつく縛られた糸は、だんだんと緩む。

体に巻き付いた糸も、楽になってきた。

腕に余裕ができたので、より広範囲の糸を弾く。

私のメロディーは、他の娘たちの軸となり、その上に違う音色が、たくさん重なってゆく。
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