たえとの短編集☆
□御伽夜話(おとぎよばなし)〜幻想の宴
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気が付くと、夜になっていた。蛍が、たくさん舞い、辺りをほの明るく照らし始めた。
しばらくすると、向こうのほうから、明かりを灯した一際豪華な屋形船が近づいてきた。
とたんに娘たちは、音の調べを乱して、黄色い嬌声をあげだした。
音が止まると、糸が体を締め付けるというのに。
おかまいなしで、艶っぽいため息をつき、妖しい声をあげていた。
今までの船には、ちらっと視線を向けるのみで、声をかけたりしなかったのに。
おかしい。
なんだ、この騒ぎ様は。
さらに驚いたことに、その屋形船は、私のいるほうへ、音もなく、ただ真っすぐにすべり寄ってきた。
供の者にひかれ、中から若く美しい、高貴な着物を着た男が一人、現れた。
その涼しい瞳。
真っすぐに見つめてきた。
瞳が、合ってしまった。
逃れられないと、感じた。