ハッピー・バード☆
□第三章 出張先で…
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1、社長の一声
「茅ちゃん!私の代わりに、マレーシアに行ってきて!」
この社長の一声で、茅子の出張は決まった。
茅子の会社は、宝石の原石を取り扱っている小卸し店だ。社長は、この若くて敏腕な女性が取り仕切っている。何故か、茅子がお気に入りだ。
「ええっ、そんな社長、私に買い付けはまだ無理ですよ…」
「大丈夫よ!あなた良い石を見る目があるもの。なんか、こう石と会話できるみたいな?感じ」
「(そりゃ、石の精霊と暮らしてますから)でも、言葉もわからないし…」
「もう現地にうちの社員と通訳を待たせてあるの。ホテルもとってあるわ。お金の交渉は彼にさせるから、あなたはいい石を選ぶだけでいいの」
「は、はい。わかりました……(大丈夫かな)」
「ごめんね〜、私は同じ日に、急にオーストラリアへ飛ばなきゃいけなくて。すごく良質で大きなオパールがでたみたいでね。じゃ、お願いね〜」
「は、はい……」
「私、あなたの見る目を信じてるからね」
女社長の勢いに押され、つい返事をしてしまった。
その日は早退させてもらい、急いで支度して、夜にはもう飛行機で現地へ飛んだ。
2、飛行機の中で
「カヤナイト、今地面を離れてますか?」
耳元のイヤリングから、羽根持つ彼の声が、茅子に呼びかける。
「ええ、飛行機で空の上だからね。これから外国へ行くのよ」
「なにか不安な感じがします。カヤナイト、気をつけて。なにかあったらすぐ呼んで下さいね」
「はいはい、わかったわ、いつもありがとう」
イヤリングのなかにいる時や、人前では、彼には声を出さなくても伝わるようだ。