たえとの短編集☆
□雪乙女
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〜〜遠く遠く、雪深い山里に、雪女がでるという。その冷たさ、美しさで、人間を惑わし、氷の柱にするという〜〜
雪女とは、自然の雪と氷から生まれたという説や、愛に裏切られた女性の生まれ変わりだという説など、諸説あるという。
そんな話もでる季節になった。同時にスキーやスノボーの流行る季節でもある。
部屋に帰ると、留守電のランプが点滅していた。彼はいつもどおり、無造作に押してみる。
「もしもし陸人?あたしよ、同級生の香織。今度ね、彼氏と秘湯めぐり&スキーのツアーに行くんだけど、
あんたも来ない?もう一人、ほら拓真って子も来るわよ。んじゃ、お返事待ってま〜す」
休日は別に予定はない。幾島 陸人(いくしま りくと) はカレンダーに日付をマークした。
………当日。四人は対面し、夜光バスに揺られ、目的地に着いた。
「わ〜すごい☆一面が真っ白だね………」
リフトで頂上まで昇ると、眼下に広がる樹氷の森や一面の雪景色が、目にしみるように美しかった。
「では、滑りますか!」
頂上から、早速始まった。陸人と拓真はスノボー、香織と彼氏はスキーだ。
身を切るようなスピード。ほてる身体にあたる冷たい風が心地よい。
一度滑ると、もう少し先へ…を繰り返し、だいぶ雪深い森の奥まで来てしまっていた。
「そろそろ帰るか……」
「待てよ、俺たちの雪跡、往復したから、めちゃくちゃに着いてんぞ…」
「これじゃ、帰る方向がわからないわ」
「困ったな……。あ、そこに人がいるんじゃないか?」
拓真が、もみの木陰に人影を見つけたらしく、近寄って行った。
………しばらくして。
「おい、いくら何でも遅すぎないか……」
「陸人、俺たちも行ってみよう。香織はここにいろよ」
「やだ、置いて行かないで。私もいくわ」
三人は拓真の向かったもみの木へ行き、その裏側を覗いてみた。
「こ、これは……」
冷たく太い氷の柱のなかに、目を見開いた拓真が固まっていた。人を呼び止める片手をあげ、たった今、止まったような動きのままで。
「キャアアア!」
取り乱した香織の悲鳴が大きく響き、その音波で、拓真の氷は粉々に砕け散った。余計に錯乱する香織。
「あたし、殺しちゃったの?拓真を……し…ちゃった…の?いやああぁ」
「落ち着け香織!きっと何かの間違いだ。お前のせいじゃない!」
「………。」