ハッピー・バード☆

□第七章 運命の…
1ページ/1ページ

1、帰国後の…

 イスキア公国から帰国後、1週間が過ぎて。

茅子たちは、ルチル・ジュエリーで、通常の勤務に戻り、仕事をしていた。

海外の皇室が御用達、という看板がついて、ルチル・ジュエリーは、業界でも一般的にも、一気に有名になった。

もちろん、茅子はその社長として、マスコミに出たりして。ちょっとした大忙しの秋を迎えていた。ありがたい話である。

そして。
移りゆく季節は、もう冬になっていた。

ただ一つ、変わったことがある。

それは、ラピスが仕事場について来なくなったことだ。もちろん、イヤリングのなかにいるのだが。

以前は、(もしものことがあるといけないから、先に呼び出しておいてほしい)とラピスが言うので、家にいる間にイヤリングから呼び出していた。

姿を茅子だけに見えるようにして、一緒に出勤していた。 

だが。帰国してからすぐのこと。

いつものように、職場で茅子が書類に目を通していると、ラピスが後ろから抱きついて、耳に軽くキスしてきた。 

(ちょっと!いま仕事中なんだから)

(いいじゃないか、誰も僕が見えてないんだから…)

最近は、思念だけで会話できるようになったものの。なぜかラピスはとてもくっつきたがる。以前よりもずっと。

そこへ。 

「コホン!え〜、茅子社長、浜野です。ちょっとお時間よろしいでしょうか」

「は、はい!何でしょう」

湯沸し器のある部屋へ、そそくさと移る。

「社長、その…ボディーガードをつけられるのは、ご自由なのですが、そのように四六時中いさせるのは、いかがかと…。」

「そ、そのようにって」


「後ろにいる彼のことです。それでは仕事に集中できないんじゃないですか」

「み、見えてたの!……………いつから?」

「はい。僕が、茅子先輩……コホン、社長から頂いた石の精霊ハウライトと出会ってから、です」

「ええ?!イスキア行く前からってこと?」

「………はい」

これは恥ずかしい。
ラピスとのやりとりは、自分たちしか見えないと思っていた。

「もしかして、愛ちゃんにも見えてるのかな…?」

「いや、彼女はたぶん見えていませんよ。見えてたら、リアクションすごいはずですから」

「……そうね」

そう言えば、浜野といる時はラピスはいない。イヤリングに戻ることは、自由に出来るらしい。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ