ハッピー・バード☆
□第七章 運命の…
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1、帰国後の…
イスキア公国から帰国後、1週間が過ぎて。
茅子たちは、ルチル・ジュエリーで、通常の勤務に戻り、仕事をしていた。
海外の皇室が御用達、という看板がついて、ルチル・ジュエリーは、業界でも一般的にも、一気に有名になった。
もちろん、茅子はその社長として、マスコミに出たりして。ちょっとした大忙しの秋を迎えていた。ありがたい話である。
そして。
移りゆく季節は、もう冬になっていた。
ただ一つ、変わったことがある。
それは、ラピスが仕事場について来なくなったことだ。もちろん、イヤリングのなかにいるのだが。
以前は、(もしものことがあるといけないから、先に呼び出しておいてほしい)とラピスが言うので、家にいる間にイヤリングから呼び出していた。
姿を茅子だけに見えるようにして、一緒に出勤していた。
だが。帰国してからすぐのこと。
いつものように、職場で茅子が書類に目を通していると、ラピスが後ろから抱きついて、耳に軽くキスしてきた。
(ちょっと!いま仕事中なんだから)
(いいじゃないか、誰も僕が見えてないんだから…)
最近は、思念だけで会話できるようになったものの。なぜかラピスはとてもくっつきたがる。以前よりもずっと。
そこへ。
「コホン!え〜、茅子社長、浜野です。ちょっとお時間よろしいでしょうか」
「は、はい!何でしょう」
湯沸し器のある部屋へ、そそくさと移る。
「社長、その…ボディーガードをつけられるのは、ご自由なのですが、そのように四六時中いさせるのは、いかがかと…。」
「そ、そのようにって」
「後ろにいる彼のことです。それでは仕事に集中できないんじゃないですか」
「み、見えてたの!……………いつから?」
「はい。僕が、茅子先輩……コホン、社長から頂いた石の精霊ハウライトと出会ってから、です」
「ええ?!イスキア行く前からってこと?」
「………はい」
これは恥ずかしい。
ラピスとのやりとりは、自分たちしか見えないと思っていた。
「もしかして、愛ちゃんにも見えてるのかな…?」
「いや、彼女はたぶん見えていませんよ。見えてたら、リアクションすごいはずですから」
「……そうね」
そう言えば、浜野といる時はラピスはいない。イヤリングに戻ることは、自由に出来るらしい。