たえとの短編集☆

□御伽夜話(おとぎよばなし)〜幻想の宴
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(………く、ぅ…)
 身体中の痛みと、美しい音楽の調べで、意識がまた、呼び戻された。

まず。
体の自由が利かない。

何か特別に強い糸を編んで出来た、雫型の鳥かごらしい物の中に、自分はいる。

同じ糸で身体を吊されているのだ。

キリキリ、と。
糸はきつく身に絞まる。

足元には、水の波紋。
金持ちが道楽で作ったような、広大な人工の池だ。 

ウフフ…クスクス…
周囲には自分と同じような娘たち。薄い衣一枚で笑う表情は、どこか異様だ。

驚いて自分を見ると、やはり薄絹一枚にされていた。

彼女らは、身の回りにある複雑に絡んだ糸を、少しずつ真っ直ぐに解きながら。

まるで、指先でハープの弦を弾くように爪弾き、奏でていた。

ポロン、ポロロン…、
チリチリ、チリン…、

より美しい音が鳴る間は、糸の絞まりがゆるむらしい。

何もしないでいると、更にきつく絞まってくる。

仕方がなく、自分も周囲の調べにあわせ、音を奏でながら、考えた。

(刀さえ、手にはいれば……出られるッ)

時折、横を豪華な屋形船が行き過ぎる。

考えろ。
脱出の方法を。

私はここから出たい。

あんな娘たちのようには、なりたくない。


船をこぐ人間の腰には、刀がある。ギリギリまで近づいたら飛びかかり、刀を奪おう。

刀を奪いさえすれば、どうにかなる気が…す……る。
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