のべる2

□Rainy World
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――雨は嫌い。

冷たくて肌寒いし、

周りが暗くなるし、

ジメジメしてて気分まで滅入る。

それに、

世界中で僕一人しか存在しないような錯覚をおこすから。




〜Rainy World〜




ぽつりぽつりと降ってきた雨に気づいてももう遅い。
数分後にはザーザーと土砂降りに変わってしまった。


「派手に濡れてもーたな」

「この時期の天気予報は当てにならないね」

白石が東京に来て、不二の家に帰る途中、雨が降った。
天気予報では快晴だと言っていたため傘もなく、住宅街でコンビニもないので傘を調達することも出来ない。
仕方なく、二人は近くの公園で雨宿り出来る適当な場所に避難した。


「通り雨かな」

「せやたらエエけど」

二人して空を見上げる。
雨が止む気配は一向にない。


「不二クン…」

白石は空から不二の方へ視線を変える。


「シャツ濡れててなんやエロいわ」

「頭にキノコでも生えたんじゃない、白石?」

「それに、おでこやうなじに髪が張り付いとるのもこう、ムラっとくるわ。んんーっ絶頂!」

「…もういっそ、そのおめでたい頭、雨で冷やしたら?」

「ひどっ!」

「全く。雨なのにテンション高いね」

軽く溜息をつく不二。


「不二クン、雨嫌いなん?」

「嫌い…かな」

「まぁ確かに、外で部活する俺らには勘弁して欲しいときもあるな」

「それもあるけど…」

一呼吸置いて、不二は次の言葉を続ける。


「雨って不透明で不確かな感じがするんだ。周りも暗くなって…まるで世界に僕しかいないような錯覚がするし」


――冷たくて寒い中、

僕を一人ぼっちにさせるから。

だから雨は…


「俺忘れてへん?」


――不透明で不確かな世界に、声が聞こえた。
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