のべる2

□魔王の命令は絶対なんです
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それは魔王の一言から始まった。


「付き合って」

「は?」





〜魔王の命令は絶対なんです〜





「付き合うって、どこに?」

「やだなー、不二。惚けないでよ」


全国大会が終わって8月のある日。
サボテンを物色していた不二はたまたま植物の肥料を買いに来た幸村と出会った。
幸村にファミレスでも行かないかと誘われ、不二も幸村に興味を持っていたので、ついて行った。


「俺ね、不二のこと気に入っちゃったんだ。だから付き合ってほしい」

不二の向かいの席で、相変わらずの穏やか微笑みを絶やさずに言う。


「悪いけど僕、幸村のことそういう意味で好きじゃないから」

「じゃあ好きになって」

「あ、あのねぇ…」

普通告白する時は、真面目で必死にするようなものじゃないだろうか。
幸村の態度はどう考えても、告白するような感じではない。優雅に紅茶を飲んでるし、穏やかだし。
幸村は"付き合ってほしい"と、お願いしたが、お願いというより命令に聞こえた。


「残念だけど無理だよ」

「何で?」

「何でって…そっちこそ、どうして僕なの?」

「簡単に言えば一目惚れ、かな。それは俺もよくわかんないけど」

「…何それ」

正直、不二は幸村みたいな強い人に惚れられてるのは悪い気がしなかった。
なのに、好きになった理由がよくわからないと言われ、確実にショックを受けた。


「ふふ…そんな顔しないでよ。拗ねちゃって可愛いね」

不二の心を悟ったのか、幸村は優しく声をかける。


「誰も拗ねてなんか…」

「安心して」

言葉を遮って、不二の手を取りながら幸村は言った。


「俺、ちゃんと不二のこと好きだから」

手の甲にキスしながら囁く。
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