のべる2

□お出かけしましょ
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それは桜が散り始めた頃、白石の一言から始まった。


『不二クン、俺と旅行せぇへん?』

「旅行?」

『おん。GW中にな。東京でも大阪でもないとこ行かへん?』

電話越しから聞こえる彼の声はとても楽しそうだ。


「でも…部活があるだろ。お互いに」

不二は躊躇いがちに言った。
白石とは恋人同士なのに、高校生になってまだ一度も会ってない。
東京と大阪。
この遠くに離れた距離を今でももどかしく感じてしまう。

不二だって白石に会いたくてたまらないし、できたらデートだってしたくてたまらない。
けど、甘えてばかりいられない。


『その辺はまかせとき。不二クンどこ行きたい?北海道?軽井沢?あ、それとも不二クン寒がりやから九州の方がエエ?』

「本気で言ってるの!?」

東京と大阪の往復だけでお金が結構かかるのに、そんな所に行くつもりなんて、金銭的余裕はあるのだろうか。


『大丈夫やて。なんとかするから』

不二の不安を悟ったのか、白石は優しい声音で言う。


『ちゅーか俺、不二クン不足やねん。もう不二クンがおらへんと寂しくて死んでまう』

「クスッ。君ってウサギみたい」

『いやいや。不二クンの方がバニーコス似合うて!…て、話ズレてもうた。やから不二クン…俺と旅行せぇへん?』

「…うん。白石とどこか行きたい」

『…ありがとな。ほな場所はどこがエエ?』

「白石が決めていいよ。白石と一緒ならどこでも行くよ」

『〜っ!!せ、せやたら軽井沢でエエか!?』


電話が声以外に顔まで伝える機械やなくて良かった。と、白石は本気で思った。
不二の思いがけない言葉に真っ赤になった情けない顔を不二に見せずにすんだからだ。


「…でも本当に大丈夫なの?」

『おん。準備はこっちがするからな。お金も用意しなくエエで』

「え!!」

『そのうち連絡いくと思うから待っとってな』


不二は一抹の不安を抱きながら、白石の言う通り大人しく、GWが来るのを待っていた。
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