のべる3

□天才の恋模様
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「今日こそ付き合ってもらうぜよ、不二」

「……またキミか」




〜天才の恋模様〜




最近、厄介な人物に目をつけられた。
下校途中、仁王は毎日のように僕の前に現れる。かれこれ、もう一週間だ。


「相変わらずつれんのう」

そう言いながら僕の後をついていくのも、もう慣れてしまった。


「キミも懲りないね」

「一途って言って欲しいんじゃが」

「…あっそ」

前に聞いたが、彼は僕に会うため六限目をサボってるらしい。どうしてそこまでするのか理解できない。


「…ねぇ」

ぴたっと止まって振り返る。すると仁王も止まった。


「そこまで僕にこだわる理由は何?」

「不二のことが好きだからに決まっとるやないか」

「…詐欺師の遊びに付き合うなんてごめんだよ」

騙されてはいけない。彼は詐欺師なんだ。
きっと僕をからかって振り回すつもりだ。


「プリッ。遊びのつもりじゃないぜよ。俺、意外と純情なんじゃが」

「どこがだよ」

我が儘で勝手で子供っぽいところはありそうだけど、はっきり言って純情そうには見えない。

僕は再び仁王に背を向けて、家に真っすぐ帰ろうとした。


「ほぅ…証明させたるきに」

「え?」

後ろから首あたりに手を回され抱きしめられた。


「な、にやって…!」

人はいないといえど、こんな往来で…。
僕は仁王の腕の中でもがくが、彼は全く離れなかった。


「少し…落ち着きんしゃい」

こんな状況で落ち着けるか。そう思ったのに、トクントクンという音が聞こえて、一瞬思考が停止した。


「この音…」

「聞こえるじゃろ?こちとら、かなり緊張しとるんじゃ」

僕の背中と仁王の胸がピッタリくっついてて嫌でもわかる。仁王の心臓の音。

首に回された手が顎を掴み、強制的に顔を仁王の方に向かされる。


「好いとうよ、不二」

その言葉は詐欺?それとも…。
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