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□君のお兄さんを僕にください
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…俺はこの時ほど不二周助の弟であることを恨んだことはない。
「裕太クン。俺のパーフェクトなトリュフ、ごっつウマイでぇ」
「君はケーキが好きだよね?裕太くん」
トリュフとチョコレートケーキをずいっと差し出してくる白石さんと佐伯さん。
今は兄貴のことをコンプレックスに思っていない。むしろ素直に尊敬している。元々、俺は兄貴が嫌いで疎遠していたわけじゃないし。
不二周助の弟であることを誇りに、嬉しく思っている。
…思っている、が、この話と今の問題は別だ。
「大体、"裕太クン"なんて馴れ馴れしいよ」
「いずれ俺の義弟になるんやからエエやろ、別に。」
「裕太くんの兄になるのは俺だよ。裕太くんだって君より俺の方が懐いてるし」
「一緒におった時間が長いだけやろ。裕太クンが尊敬しとるんは不二クンに勝った俺や」
このくだらない言い争いの原因を作ったのは兄貴と、ホワイトデーだ。
バレンタインの時、兄貴達は卒業準備や受験などで忙しかったから何事も起こらなかった。
しかし、ホワイトデーの日。白石さんと佐伯さんはウチにやって来た。
それぞれチョコレートを持って。
そしてチョコレートを差し出された兄貴はこう言った。
『裕太。どっちがいい?』
そこで俺に振るなよ!と突っ込む暇さえなく、二人は俺に詰め寄った。