戦争の恋歌
□『戦争の恋歌』第二弾・前編
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昭和20年3月初頭
私達は相変わらず薄着のままだけど、鹿児島とか・・・本島の人達はこれから薄着になるらしい。
何せ、もっと北の方は雪まで降ってるとか。
まぁ一年中夏みたいな所に住んでいる私には全く無縁なのだけど・・・
芋と僅かの小魚しか無い弁当箱を下げ、学校に向かっていた。
中には芋すら持って来れない子も居るからウチなんて良い方なんだ。
日光が差す中で感じる心地良い風を感じ、背伸びをしていると
「ユイちゃん、おはよう」
「あっ、お早う久美子!」
親友の由美子が後ろから声を掛けてくれた。
あっ、私は辺土名ユイ。
お父さんと弟で暮らしているの。
にぃにぃ(お兄さん)も居るんだけど、今戦争に行っちゃった・・・
お母さんも二年前に病死。
ただでさえ戦争で若者が死んでるのに・・・ホント辛い。
それに、沖縄には基地だってある。
正直これから心配なんだけど・・・
「・・・ちゃん、ユイちゃん!」
「・・・え?あ・・・ゴメン、ぼんやりしちゃった・・・で、何て言ったの?」
「だ・か・ら、今日はかけっこが有るって事!
私・・・ユイちゃんみたいに足早く無いし・・・」
と凹み、肩を落とす。