高潔な氷晶と病みし双色
□高潔な氷晶と病みし双色
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鎖夜がいつも通りに屋上に行けば既に先客がいた。
涼野風介だ。
鎖夜は小さく溜め息を吐き、もと来た階段を折り返そうとするが、声が掛かった。
「何故帰るんだ?」
そりゃあ貴方がいるからでしょ、とは言わない。
会話はしたくないんだ。
いや、会話なしでも顔を合わせるって時点でいやだ(同じ空間にいるだけで嫌だなんて我が儘は言わないで置こう。それ以前に同じ空間という範囲がよく分からない)。
鎖夜はその意思表示に風介を睨んだ。
「なんだ?何か言いたいなら言えばいいじゃないか。」
腹が立つ言い方だ。
言わない方がいいと判断したら言わないに決まっているじゃないか。
そんな事も分からないの?なんて心の中で悪態をつく。
心の中では誰だって強者になれる。
だって所詮自分達の世迷い言で、絵空事で、妄想なんだから。
鎖夜はそう考え、冷静な思考を取り戻した。
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