短い文章
□カッコいい人
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十万打記念文
オリジナル文章
「あの人凄くカッコいいなー…」
私は彼の奥の方に視線を向けた。
彼の手がピクリと反応した。
「あの人なら一口くれるだろうなー」
彼はゆっくりと首を回した。
多分私の言うカッコいい人を探しているのだろう。
勿論そんなカッコイイ人なんて彼には見えないに決まっている。
私の演技であり、妄想の一環に過ぎない。
彼は周りを見回していた双眸を私に戻した。
「どいつだ」
彼は一言とても不機嫌そうに言う。
勿論そんなピュアな所が好きだし、何よりこうやって反応してもらえると気にかけて貰っているんだなーと実感できる。
何よりからかうのは楽しい。
「ほら、そこの人」
「だからどういつだよ」
「すぐそこにいるカッコいい人だよ、見えないの?」
会話が続くにつれて彼の機嫌は急降下。
勿論ワザとなんだからどうとも思わない。
ただ反応を楽しむだけ。
「きっと彼なら私が頼めば一口くれるよ」
私は頬杖をつきながらニコニコと笑みを浮かべる。
これを笑わずにはいられない。
彼はスプーンでプリンを一口分掬うと私の方に突き出した。
「一口だけだからな」
唇を尖らせ、頬に朱を滲ませながら視線を逸らしている彼。
そんな表情や仕草が堪らなく好きだ。
最終的に折れてくれる所に、優しさを感じるし、とんでもなく私に甘いと思う。
私は笑みを深め、差し出されたスプーンに唇をつけた。
口の中に広がる深い甘み。
「おいしいね」
全て私の計算通り。
こうやって挑発すれば絶対に彼はくれると私は確信していた。
美味しいティータイムを終えて私と彼は店を出た。
彼は私の言うカッコいい人がどの人か分からずにいた為にずっと不機嫌そうだった。
その帰り道、彼が口を開いた。
「結局どいつなんだよ?一口やったんだから教えてくれたっていいだろ」
「知りたい?」
「当たり前だろ」
私はこの答えを言うのが面白くてしょうがない。
言う前から面白い、考えただけでも面白過ぎる。
彼は浮気だとか思って嫉妬心を抱いている。
それが面白い。
「私の目の前にいた人だよ」
私はその一言を言うのにどれだけ笑いをこらえただろうか。
隠しきれない笑いを音を立てずに口元だけを緩めて我慢する。
彼はその意味に気付いたらしく、顔を真っ赤に染め上げた。
羞恥か、照れているのか、はたまたからかわれた事への怒りか。
そうやって直ぐに顔に出る所も好きだ。
結局彼は居もしない相手所か、自分自身に嫉妬していたのだ。
それはなんて滑稽だろうか。
笑いを堪えていた私を褒めてやりたい。
「ホント、貴方はかわいい人だね」
「か、からかうんじゃねーよっ!」
真っ赤な顔で怒られたってちっとも怖くない。
「だから私はいつまでも貴方が好きなの」
カッコいい人
(全て私の計算通り。)
(ああ、次はどうからかおうかな。)
---------------- 8×キリトリセン ----------------
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