短い文章
□戻ることも同じところにいる必要もない
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「佐久間、そんな所で何してるんだ」
いつもとは違う、怒った様な困惑した様な仲間の声。
俺はそれを聞かないフリしてただ3歩先のずっと先に見える小人たちを見つめる。
少し先にある近くの公園では白と黒のボールを追いかける小学生くらいの子供が見えた。
羨ましいと、ただ純粋にサッカーをしている彼らが羨ましかった。
「佐久間!」
大声で名前を呼ばれ、驚きで体が震えた。
ゆっくりと振り返る。
「なんだ、源田か」
そこにいたのは予想通りの源田だった。
どうせなら鬼道に会いたかった。
一目だけでも会いたかった。
「こっちへ来い、佐久間」
源田はゆっくりと手を伸ばして来た。
だが俺はその手をとろうとは思わなかった。
「俺は鬼道にあんな事をっ...、」
思い出すだけで腹が立った。
出来る事ならあの日の自分を思いっきり殴ってやりたいと思った。
俺は片手で柵を掴み支えながら、反対の手では眼帯で隠れている方の目を覆う。
悲しい筈なのに自然と口角が上がるのが不思議だった。
「鬼道は許してくれるさ」
だから、と言葉をつづけて近付く。
「鬼道は優しいからな。だがそれじゃ、俺の気が済まないんだ。俺は最愛の人を裏切ったんだ。罰が貰えないのならば、いっその事...、」
佐久間が渡った様な気がした。
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