高潔な氷晶と病みし双色
□高潔な氷晶と病みし双色
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「わー、みんな痴漢だよー。」
他人事のような(事実他人だ)呑気な言葉と共にパシャっと携帯のカメラ独特の音が聞こえた。
痴漢と言う言葉に皆反応し、車内がざわざわする。
男の手が離れた。
そしてもう一度パシャっとカメラ音。
そんなに写真撮って何するんだ。
鎖夜は助けてくれた恩人の顔を見た。
鮮やかな朱色。
ピーコックグリーンの瞳。
整った顔をしていた。
なんと言うか...フォーマル美形?スタンダード美形?
でも、見覚えのあるようなないような...そんな顔。
雑誌かなんかで乗ってたのかな?
アナウンスが次の駅を告げる。
そして扉が開いた。
男はそこからダッシュで逃げ出した。
「逃げたって無駄なのに。写真があるからね。」
細められたピーコックグリーンの瞳があの男を哀れんで...いや、非難していた。
その視線にゾクリとした。
彼は鎖夜に向き直り、にこりと微笑みかけた。
「大丈夫?」
あまり好きじゃない笑い方。
愛想笑いは好きじゃない。
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