高潔な氷晶と病みし双色

□高潔な氷晶と病みし双色
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誰にも自分を知られずに済むと思ってこの臙脂色の右目を隠して、わざわざ遠いこの学校まで32分かけて通っているというのに。



これじゃあ苦労が水の泡じゃないか。



空気読め、クソやろー。



今なら彼の愛想笑いを苦痛に歪む顔に変える事が出来そうだ。



そんな恐ろしい事を頭の隅で考えた。



「ねぇ、鎖夜ちゃん。」



不意にヒロトに名前を呼ばれた。



『止めて、馴れ馴れしく私の名前を呼ばないでよ。』



鎖夜はヒロトの呼びかけに間を入れずに言い放った。



「今朝と態度が全然違うよ?」



恩人に対してこれはないんじゃないかな?なんて付け加えて言われた。



『それは貴方が昔の知り合いだからよ。』



だから私に関わらないで。



心の中でそう付け足しておく。



それは本人に言わなきゃ意味を成さないのだが、彼なら口に出さなくても分かってくれる気がする。



「じゃあ、なんて呼べばいいの?」



『呼ばなくて結構よ!!』



鎖夜がそう言うとヒロトは困ったような笑みを浮かべた。



わざと悪ぶって人を避けている...いや、避けていると言うより怯えている。



臆病なんだ、人と関わることに対して。








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