短い文章
□遺言代行人
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「ひとりだけ生き残ったらしいわよ、あの子。」
「可哀想に...。」
角の方でひそひそとされる大人の会話。
しかしその声を聞き取ることは安易だった。
会話の話題になっているあの子とは、今回の葬式の遺族である幼く色素の薄い銀髪の少年。
俯いていて銀色の少年の新橋色の瞳も表情も窺えない。
泣いているのだろうか?
その瞳にはやはり絶望が映っているのだろうか。
それとも家族の死を受け入れられずに放心しているのだろうか?
珊瑚色の髪に新橋色の瞳の少年が銀色の少年に向かって言葉を発していた。
しかし珊瑚色の少年の言葉は銀色の彼には届かない。
不意に珊瑚色の彼の新橋色の瞳と目が合った。
珊瑚色の彼は私に近付いてきた。
私は咄嗟に目を逸らした。
「なぁ、アンタ!俺が見えるんだろっ!」
そう言った珊瑚色の彼が目の前にいても無視する。
「無視すんなよ!」
私にしか見えない彼。
つまり幽霊だ。
事実珊瑚色の彼が黒い額縁の写真に収まっている。
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