短い文章
□愛を語れるほど、まだ素直にはなれない
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コンクリートの壁、部屋は薄暗く、生活用品など殆どない。
ただ、ベッドと小さな棚があるだけ。
まるで病院の個室だ。
いや、病院の個室の方が数十倍マシだと言える。
病院ならテレビだってある。
それに衛生的だ。
この部屋に光は射し込まない。
窓などありやしない。
外の様子など分かりやしない。
音も聞こえない。
時間の流れもこの部屋には届かない。
不規則な生活の中、時間間隔などとうの昔に狂っている。
「はっ...ぁ、」
「ハッ!まるで動物みたい、だな...」
「...どっちが、だっ...、」
コンクリートの壁に妙に声が反響する。
余裕そうなその声がムカつく。
自尊心を傷つけられたような、裸にされた様な気分だ。
いや、もうお互い裸か。
俺の上にいる男は初対面から気に食わなかった。
人を見下したような瞳も、癇に障る様な口ぶりも、無駄に色気がある声も、批判的で反抗的な態度も、妙に紳士的な腕も、全部がだ。
全部が気に食わない。
「かわいいなァ、鬼道ちゃんは、」
そう言ってニタリと上がる口角に、抵抗は無駄だと知る。
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